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シンガポール国産チンゲン菜 割高でも支持

NIKKEI STYLE

「本日採れたての国産野菜。新鮮さは保証します」――。シンガポールの東部住宅地にある大型スーパー、フェアプライス・エクストラの野菜売り場に、目を引く店頭販促(POP)表示がみられる。「地元の農家を応援しよう」という宣伝文句もある。

フェアプライスと政府機関のシンガポール食品庁が、ネクスト・ファーマーズ、リブ・フレッシュなど同国の農業企業と組んで展開する、国産野菜の普及促進キャンペーンだ。特設の棚に並ぶチンゲン菜やパクチョイなど地元でおなじみの中国野菜、サラダに人気のケールやレタスはすべてシンガポールの"畑"で収穫された。

「ケールは生で食べることが多いから、これがいいのよ」と、家族で来店した女性が「無農薬」をうたった国産ケールの袋を手に取り、レジに向かった。

都市国家シンガポールの農業は産業発展とともに縮小し、わずかに残る農地は国土の1%。しかし近年、再生の試みが加速している。土地が高価で希少なため、ビルの中で気温や湿度、光量を管理しつつ野菜を育てる植物工場や、屋上農園といった都市型農業が中心だ。

食品庁によれば国内の農場の数は小規模ながら260カ所と、3年で18%増えた。栄養価の高い野菜作りに取り組むスタートアップ企業も育っている。

国産強化の背景にあるのは、食料安全保障に関する危機感だ。政府は2019年、10%未満だった食料自給率を30年までに30%に高める目標を定め、国内の農業企業のマーケティングや研究開発を支援している。

新型コロナウイルス禍の供給網混乱で、食料不足の不安が高まり、スーパーの棚が幾度となく空になった。自給の意義を人々が肌で感じており、国産への関心は強まっている。

ハードルは価格だ。植物工場は電力や人件費などの費用がかさみ、輸入野菜の大部分を占める中国産やマレーシア産などより割高だ。11月中旬の店頭で、国産チンゲン菜は100グラム換算で1.8シンガポールドル(約182円)。近くに並ぶ中国産は0.52シンガポールドルと、3分の1に満たない。

インフレの加速で消費者が支出に敏感になっているのも逆風だ。価格競争は勝ち目がないと、栄養価の高い「スーパーフード」と呼ばれる野菜に力を入れるなど、普及に向けた模索は続く。

(シンガポール=谷繭子)

[日経MJ 2022年11月28日付]

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