散らかった部屋がいつもスッキリ カギは定位置片付け

せっかく部屋を片付けても、数日でまた元通りに――。一度リバウンドを経験すると、片付けへのモチベーションがぐっと下がってしまう。落胆せず、散らかりの原因を見つめなおそう。
「収納が足りないのが原因だから、収納家具を買い足そう!」と思った人は、少し立ち止まって。モノの定位置が定まらぬうちに家具を増やしても、維持の手間が増えるだけで根本解決にはならない。まずはリバウンドしてしまった現状を、写真撮影しよう。散らばって目につくモノは、「使用頻度が高いのに、定位置が不適切なモノ」だ。
使いやすい定位置を決める上で、役に立つのが「引き算」の思考。インテリア雑誌を眺めると、「リラックスできる北欧風の部屋で、友人を招いてパーティーをして、お花と趣味のモノをたくさん飾って……」と理想が膨らみがち。残念ながら、一足飛びに快適空間は作れない。収納に悩みを抱えるうちは、「生活導線をスムーズに通れること」だけに目標を下げるべきだ。
忙しい人であるほど、シンプルを心がけたい。例えば、幼稚園をイメージしてほしい。頻繁に使うモノは取り出しやすいカゴにざっくりと収納し、個々人の荷物は名前ラベルのついたカゴに収納する。ユニバーサルな設計にすれば、仕事や家事に追われる平日も、家族皆が自然と定位置に戻したくなるだろう。
私が片付けに伺ったクライアントは、ほぼ例外なく、大小様々な収納グッズを隠し持っている。本人は「持っていない」と思っていても、押し入れや部屋の隅から、書類ケースやブックシェルフ、カゴなどが相当数出てくるのだ。
収納グッズは一度買うと、なかなか手放しづらい。フェリシモの調査によると、20~50代女性のうち65%が、購入した収納グッズを使いこなせなかった経験があるという。思いつきで買った収納用品は、使いこなせない確率が高く、収納したモノを死蔵品化させるリスクがある。つい出しっぱなしにしてしまう癖がある人は、性格がだらしないのではなく、収納用品が重い・硬い・使いにくいなどの問題を抱えていることが多い。
収納グッズを新調する際には慎重に。手持ちのグッズや、菓子や靴の空き箱で仮置きしてから買うと失敗しにくい。紙製の箱であれば切り貼りして大きさを自由に変えられるので、カラーボックスや引き出しの中の仕分けに便利だ。購入する際はメジャーで3辺寸法を測った上で、通販サイトで購入しよう。重さや素材の確認も忘れずに。

本棚や雑貨棚など専用の収納家具を部屋に置くと、「棚がいっぱいになるまで揃えたい」という心理になってしまう。私は荷物の量や種類に合わせて調整できるよう、3段のカラーボックスを必要な数だけ置くようにしている。本をたくさん読む時期は本を収納し、化粧品や雑貨を置きたいときは本に割く棚を減らすなど、時期ごとに収納するアイテムを模様替えできるのが最大の利点だ。カゴと組み合わせればタンス代わりにもなる。フタの開閉がないため、出し入れの動作も減らせる。週1回以上使うモノは3段カラーボックスに収納、それ以下のモノはフタのある箱に詰めて見えにくい場所へ、という使い分けを推奨している。
収納グッズを買った後、しっくりこなければ、潔くフリマなどで売ってしまおう。無理して使い続けると散らかりの元になる。例えば私は大きい衣装ケースや吊り下げ式の収納とは相性が悪く、使いこなせたことがない。
紙袋を収納袋として活用する人もいるが、中身が見えにくい、ホコリがたまりやすい、上に重ねられないなどの理由から、長期保管には向かない。片付けの最中の仮保管やモノの運搬のために一時的に使い、使い終わったらまた畳む、という形で活用しよう。
適切な定位置を決めたら、「使ったら元に戻す」を習慣化する。忙しい平日はつい使ったモノを出しっぱなしにしてしまうので、ざっくりと戻せるカゴを居住スペースに置いておくと便利だ。図書館の返却台のように、元に戻すのが面倒なものはとりあえずカゴに入れておき、休日に時間を作って定位置に戻す。もしまた散らかってしまったら、写真を撮って原因を探す。これを繰り返せば、リバウンドとは無縁の、筋肉質な部屋が完成するはずだ。
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「見せる収納」は上級者向き
書店の整理収納コーナーでは、ハイセンスなインテリア雑誌や、目をひくような収納アイデア集が、ずらっと並んでいる。ここで並んでいる片付け術は、上級者向けがほとんど。収納・掃除に十分な時間をかけられる人でないと、挫折してしまう可能性が高い。特にお気に入りのアイテムを飾りながらも収納する「見せる収納」は、かなりのテクニックが必要だ。面倒なことが苦手な人は、最初はとことんシンプルな部屋を心掛け、定位置が決まり余裕が出てきてから、インテリアショップに足を運ぶようにしよう。
(整理収納アドバイザー 米田 まりな)
[NIKKEIプラス1 2021年10月30日付]
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