正月・松の内は7日?15日?  関西と関東、なぜ違う - 日本経済新聞
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正月・松の内は7日?15日?  関西と関東、なぜ違う

とことん調査隊まとめ読み

年末年始にかけて帰省・Uターンをして日本各地の習慣の違いを改めて感じた人も少なくないかもしれません。「正月の松の内は7日?15日?」「すき焼きは煮る?焼く?」「落語の江戸と上方の展開の違いは」。関西と関東で違いが生まれた要因・歴史を関西発のコラム「とことん調査隊」からまとめました。(内容や肩書などは公開当時のものです)

年が明けて松の内の7日を過ぎても、大阪の町のあちこちに門松やしめ縄が飾ってあることに気がついた。きれいに片付いている東京とは、季節が異なるかのようだ。理由を尋ねると、大阪では15日までが松の内という。ゆったり正月を祝おうとする姿からは、大阪商人の誇りと意地がのぞく。

いつから東京の正月は短くなったのか。江戸時代の後期に記された風俗誌「守貞謾稿(もりさだまんこう)」に、こんな記述を見つけた。「江戸も昔は、十六日に門松・注連(しめ)縄などを除き納む。寛文二年(1662年)より、七日にこれを除くべきの府命あり。今に至りて、七日これを除く。これ火災しばしばなる故なり。京坂は、今も十六日にこれを除く」

江戸前期に幕府の命令で松の内を早めたというのだ。当時、江戸の町では毎年1~2月に大きな火事が頻発していた。幕府は燃えやすい正月飾りを少しでも早く片付けさせたかったのだろう。

大阪商人は「ゆったり構えていた」?

松の内の短縮は商業の発達と関係があると指摘するのは国立歴史民俗博物館・名誉教授の新谷尚紀さんだ。「天候次第の農業に対し、商業はスピードが勝負。歴史が浅い、いわば新開地の江戸で新たなしきたりとして定着した」

大阪商人はそうした流れにあえて背を向けた。「お金持ちはやっぱり文化人になりたい。正月にガツガツせずとも、もうけるときはしっかりもうけると、ゆったり構えていたのではないか」。新谷さんはそれを「自分らしさの証明」とみる。...続きを読む

すき焼きの名の通り、割り下をかけて焼くのが関西では一般的な調理法のようだ。気象情報会社のウェザーニューズの調査によると、東日本では肉を割り下に入れる「煮る派」が多数であるのに対し、関西2府4県は初めに肉を焼く「焼く派」が約7割を占めた。

さらに詳しい歴史を知るため、日本食文化会議の松本栄文会長に話を聞いた。すき焼きの語源は農作業に使う鋤(すき)で鶏肉や野菜を焼いたのが有力だという。発祥は横浜の伊勢熊といわれる。意外にも味付けはしょうゆではなく、牛肉の匂いを消すため角切り肉を味噌で煮込んだのが始まりらしい。当時は「牛鍋」として広く知られていたようだ。

溶き卵につけるのは大阪・ミナミが発祥

明治以降、肉食解禁と開国による食肉文化の伝来で牛肉需要は増加し、たくさんの牛鍋店が関東に出店するようになる。各店は特徴を出そうと、しょうゆや塩をベースにした牛鍋を独自に開発する。しょうゆは現在のすき焼き、塩は現在のしゃぶしゃぶとして進化した一方、味噌は淘汰されていく。牛鍋の普及に伴い、肉塊を薄切りにする技術も向上していったという。

こうした技術を身に付けた料理人が全国に進出したことで、関西各地に牛鍋が伝わる。砂糖が豊富にあった関西では砂糖としょうゆで味付けをする、すき焼きとして広がった。ちなみに溶き卵につけるのは大阪・ミナミの北むらが発祥で、熱した肉を冷ますためといわれている。...続きを読む

天満天神繁昌亭(大阪市)で落語を聴いていると、ある演目の下げ(落ち)が以前東京で聴いたものと違っていた。早速知り合いの噺(はなし)家に聞くと、上方落語と江戸落語は成り立ちが異なり、元は同じ演目でも題名や登場人物、展開や下げまで変わることがあるという。東西の落語の違いを探った。

まず繁昌亭初代支配人で現在はアドバイザーを務める恩田雅和氏を訪ねると「落語は戦国時代に大名らに世情を伝える御伽衆(おとぎしゅう)がルーツといわれ、江戸がお座敷芸、上方が大道芸として発展した」と教えてくれた。江戸は屋内でじっくりと噺を聴くので「文七元結(ぶんしちもっとい)」などの人情噺が目立ち、上方は社寺の境内で人の気を引くため「牛ほめ」などの滑稽噺が多い。

上方のボケとツッコミ、後の漫才に

異なる文化について、笑いの違いから鋭く切り込むのが若手の桂咲之輔だ。「上方の登場人物はボケとツッコミ。これが漫才にもつながった。江戸は理屈で笑いをとる」と説明してくれた。

例えば上方の「時うどん」は江戸の「時そば」だが、両者の登場人物や展開は異なる。「時うどん」では知恵の働く兄貴分と弟分がツッコミとボケのやりとりをしながら勘定をごまかすが、「時そば」は勘定をごまかす男を別の男がまねをする内容となり、2人の男は関わりを持たない。...続きを読む

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コラム「関西タイムライン」は関西2府4県(大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、和歌山)の現在・過去・未来を深掘りします。経済の意外な一面、注目の人物や街の噂、魅力的な食や関西弁、伝統芸能から最新アート、スポーツまで多彩な話題をお届けします。

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