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美しい「深黒」、古着再生の技 ビジュアルで迫る現場

現場探究

(更新)

黒い液体を吐き出しながら回る染色用のドラムの中で、赤いジャケットや白いコートが真っ黒な新たな姿に生まれ変わる。洋服の染め替えを手掛けるのは1915年創業の京都紋付(京都市)。黒紋付きだけを長年染め続けてきた老舗企業が、汚れや色落ちで着られなくなった服を染め直す「アップサイクル」(価値の高いものへの再利用)に取り組んでいる。

【LBSローカルビジネスサテライトの動画をこちらに】
古着の洋服を黒染めで再生 京都、100年超の紋付きの技

京都紋付は日本の伝統的な正装である黒紋付きの反物を100年以上染め続けてきた。「世の中の変化に対応しなければ、伝統を残すことはできない」と語るのは4代目の荒川徹社長(63)。70年代のピーク時には1日1000反ほど染めていたが、いまでは月100反ほど。和服の需要が減少するなか、新たに取り組んだのは洋服の染め替え事業だ。

黒紋付きは柄がないため、色の差がわかりやすい。奥深い黒さ、美しい黒さを追求した技術が、洋服の染め替えにも生かされている。ムラなく染まりやすくなる薬剤を生地になじませ、回転するドラムの中で染色していく。水洗を繰り返した後で脱水機にかけ、天日干しで乾燥させる。より黒く見せるには染料だけでは限界があるため、独自に開発したのが「深黒(しんくろ)加工」だ。染色後の服に光を吸収する薬品を浸透させ、黒さを一層際立たせる加工を施している。退色や洗濯などによる色落ちにも強い。

依頼される洋服の形や素材はさまざまだ。黒く染まるのは綿や麻のような天然繊維のみで、化学繊維はそのままの色を保つ。ステッチや裏地が残るなど、服によっても様々な表情を見せる。プリント生地も染まらないため、雰囲気を変えたい時にも利用できる。ムラがある場合は顕微鏡を使って繊維の状態を確認し、染められるものであればもう一度染色機にかけるか、手作業で部分的に染める。「何かトラブルがあったときに対応できるのは長年培ってきた技術があるから」(染色職人の小佐見託史さん)。ウェブ上で服の形や色、繊維の種類などを登録して注文し、工場に発送してから1カ月ほどで完成する。

2013年に世界自然保護基金(WWF)ジャパンとのリサイクルプロジェクトで、消費者や著名人の衣類を黒く染めて展示したことを契機に、染め替え事業を本格的にスタートさせた。伊勢丹新宿店とのコラボ企画では、国内外のファッションブランドが保有する店頭には並ばないB級品やサンプル品を買い上げ、黒染めを施して販売した。廃棄される可能性のある商品が一点物に生まれ変わった。「ファッションの新しいサイクルになり得る」(同店担当者の神谷将太さん)

環境省の調査によると、20年に日本の家庭や事業所で不要になった衣服のうち、全体の65%にあたる51万トンが廃棄された。京都紋付は染め替えによるアップサイクルで廃棄削減を目指す。「取り組みを日本だけでなく海外にも広めていきたい」(荒川社長)。サステナブル(持続可能)なファッションのあり方を世の中に浸透させていく。(目良友樹)

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