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1200度が紡ぐ流線、ガラスペン ビジュアルで迫る現場

現場探究

(更新)

1200度の炎から生み出される独特のねじり模様。宝飾品のような輝きと透明感のあるガラスペンを製作する菅清流さん(25)は、美しい見た目と共にさらさらとした書き味や実用性にこだわる。祖父である先代の遺志を継ぎ、次世代にガラスペンを残そうと20代の若手職人が奮闘している。

京都市にある「ガラス工房ほのお」。清流さんがガスバーナーで熱したガラス棒を両手で小刻みに回すと、波打つような模様が現れた。ガラスを炎で溶かしながら模様、ペン先の順に作っていく。均等に模様を入れながらペンを真っすぐに保つのが難しい。軸の傾きはペン先の精度にも影響する。室内の気温やガラスの色によっても溶け方が変わり、状態を見極めながら微調整を繰り返す。

先代が自作した作業台を受け継ぎ、ガラスペンを作る菅清流さん=目良友樹撮影
溝が入った硬質ガラスを1200度以上に熱して溶かす(京都市左京区)

ガラスペンは明治時代に、日本の風鈴職人によって開発された。細い管の中を液体が上昇したり下降したりする「毛細管現象」によって、ペン先の溝にたまったインクで線が書ける。インクに一度つけると、はがき1枚分ほどの文字が書けるという。

先代の菅清風さんは、高いデザイン性と実用性を追い求めて開発に打ち込んだ。昔はペン先のみがガラスで、軸は竹などの製品が主流だったが、1996年にペン先から軸まで一体になった硬質ガラス製のペンを完成させた。硬質ガラスは溶ける温度が高く加工が難しいが、耐久性がありペン先の摩耗が少ない。

ペン先から軸まで一体になった硬質ガラス製のペン
模様に光が反射しきらきらと輝く

後を継いだ孫の清流さんは、「ガラスペンを作ってみらんか」という先代の言葉がきっかけで職人の世界に飛び込んだ。入学したての大学を2カ月で中退し、工房にこもって製作を始めた。

毎日100本以上、ペン先だけを作り続けたが、商品として出せる品質になるのに半年かかった。ペン先は熱したガラスを回しながら髪の毛ほどの細さまで引き伸ばして作る。祖父から技術的なアドバイスはなく、見て覚えるしかなかったという。できあがったものを床に投げ捨てられ、心が折れかけたが一心不乱に作り続けた。

ペン先はガラスを髪の毛ほどの細さに引き伸ばして作る
先代の菅清風さんが自作したガスバーナーと作業台を使用している

祖父が亡くなる前に、病室で清流さんのオリジナル商品を手に取り「これなら買い手がつく」と言った一言が今でも心の支えとなっている。「褒めることはなく厳しい人だったが、技術以上に職人としての気概を学んでほしかったのだと思う」

美しい見た目以上にこだわるのが実用性と書き味だ。「装飾品ではなく、あくまでペン。書けてなんぼ」という先代の思いが2代目の工房にも息づいている。清流さんのガラスペンは、抵抗の少ない滑らかな書き心地にほれ込んだ作家や書家などに使われている。最近では在宅勤務時に使いたいと購入する人も多いという。

清流さんは若い人にも知ってもらおうと、漆職人との合作やワークショップの開催など新たな取り組みを始めている。時代に合わせて進化させ「祖父が作り続けたガラスペンを100年後にも残したい」。決意はガラスよりも固い。

独特のねじり模様が生み出す輝きと透明感が美しいガラスペン
すらすらと滑るような書き味が特徴

(目良友樹)

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