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データサイエンティスト、ものづくり改革 河本薫さん

関西のミカタ 滋賀大学データサイエンス学部教授

■技術屋のおっちゃんが持つ勘と経験は侮れない。そこにデータ分析を融合して業務改革に導くーー。滋賀大学データサイエンス学部教授の河本薫さん(54)は大阪ガスでデータサイエンティストとしてガス機器の故障予測から市場価格のリスク評価など多分野で分析を担い、現場から経営まで改革に関わった。

 かわもと・かおる 1966年神戸市生まれ。京都大学工学部数理工学科卒業、京都大学大学院修了。大阪ガス入社、社内留学制度により米ローレンス・バークレー国立研究所でデータ分析に従事。2018年より滋賀大学データサイエンス学部教授。

2011年から所長を務めた大阪ガスのビジネスアナリシスセンターはグループ内の全領域を対象にデータ分析を行う専門部署だ。例えば給湯器の故障時、現場担当者が部品を持って行くが故障具合によって持参したものだけでは修理できないことがある。過去の故障データから持参したほうがよい部品を予測、訪問当日に修理が完了する割合を向上させた。

メンテナンスに出る技術者たちは「冬場になるとなんか知らんけど、機器のあのあたりが調子悪くなるからこの部品を持って行くねん」と、経験と勘が行動を左右していた。分析から解決方法を提案しても当該部署が簡単に導入するとは限らない。相手の立場になって考えると、"現場のおっちゃん"は全ての部品を携行することはできない。そこで故障要因を予測し、候補をいくつかに絞った。この中に修理に必要な部品がある確率が高いという結果を示すことで分析は受け入れられた。

■データ分析は手段にすぎない。どんなに優れた分析ができても「会社で役立ってなんぼ」。分析力だけでなく社内の様々な業務に精通し、視野を広げていくことが大事だ。そんな思いから関西に拠点を置く企業のデータ分析者が集まるコミュニティーを立ち上げた。

河本教授が立ち上げた「平野町アナリティクスHub」に参加する各企業のメンバーら

データサイエンティストには分析が必要な機会を自ら「見つける力」が不可欠だ。そして、担当する業務を理解し、分析で問題を「解く力」を発揮し、改革案を提案する。分析から導き出した方法を現場が使わなければ意味がない。提案を現場に「使わせる力」として高いコミュニケーション能力が求められる。製造業では勘と経験に優れた技術者のプライドを損なわずに、現場担当者の立場で考えることで分析結果を信頼してもらうことにつながる。

視野を広げる機会として異業種にいるデータ分析者たちのコミュニティー「平野町アナリティクスHub」を立ち上げた。機密保持のため参加条件は1業種1社で関西を拠点とする家電、製薬、自動車、飲料、食品など29社、会員は約100人。参加企業は製造業が中心だ。東京にも同様の勉強会があるが金融、サービス系の企業が多く、関西はやはり「ものづくり」の会社が多いと感じる。

平野町アナリティクスHubで意見交換する参加者たち

■17年、滋賀大学に日本で初めてとなるデータサイエンス学部が誕生。18年、同学部の教授へ転身した。企業の中で成果を上げるデータサイエンティストを育成したいと思った。

大学では企業と連携したプログラムに取り組む。例えばダイハツ工業と協力して低燃費の走行を分析した。専用機器を取り付けた車両を学生が走らせて、実測データを集める。アクセルの踏み方やブレーキのかけ方などが走行に影響し、燃料の消費を左右するなど机上の計算通りにいかない。試行錯誤を重ね、学生たちは企業担当者にプレゼンテーションした。実践的な講義を通じて、「学生たちの目の輝きが違う」と感じる。データ分析から「ものづくり」の魅力に気がつくきっかけになる。

連携する企業の工場の縮小版を研究室に再現し、データを収集する(滋賀県彦根市の滋賀大学)

関西は製造業が多い。企業とタイアップした教育に取り組み、「ものづくり」の分野で活躍するデータサイエンティストを育てて、関西の製造業を盛り上げていきたいと思う。この春に社会へ羽ばたく学部最初の卒業生たちに期待している。(聞き手は小川望)

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