遠隔でヒラメを陸上養殖 KDDIなど、長崎の離島で実証

KDDIと養殖の五島ヤマフ(長崎県五島市)は25日、離島である五島市でICT(情報通信技術)を活用する陸上養殖の実証事業を1月に開始したと発表した。対象魚はヒラメで、水質維持作業や給餌を遠隔管理することで働き手の省力化や生産効率の向上を図る。2023年1月までに約3700尾を出荷する見通しだ。
五島ヤマフはクエ、アワビ、シマアジなどを陸上で養殖している。22年1月に、新たにヒラメの稚魚を約120トンの水槽に投入し、温度が20度で安定している地下海水を使って養殖を始めた。KDDIは養殖用水槽に監視カメラと水質センサー、給餌機を設置した。リアルタイムで水中と水上の様子を動画で監視し、水温や酸素濃度をモニタリングする。給餌は時間を設定し、自動で行う。離れた場所からのパソコンやスマホによる管理が可能だ。

KDDI地方創生支援室の斎藤匠室長は「市街地からも作業できるので、働く人の負担軽減により五島市が抱える人手不足に対応できる」と話す。陸上養殖は海面養殖に比べ、悪天候による作業中断や設備破損、赤潮による水質悪化といったリスクが少ない。離島は輸送コストなどがかかるが、五島ヤマフの久保聖徳・養殖場長は「新技術導入による管理の質向上で、稚魚の90%以上を生育・出荷できる見込み。歩留まりの向上で競争力が高まる」と話した。