九州電力の23年3月期、最終赤字750億円に 燃料費重く

九州電力は31日、2023年3月期通期の連結最終損益が750億円の赤字(前期は68億円の黒字)になりそうだと発表した。これまで通期予想は公表していなかった。化石燃料の高騰で火力発電所の運用費がかさむ。原子力発電所の稼働も例年より低く推移し、火力依存の高まりで電力事業の収支が悪化する。1月以降は保有する原発4基のうち3基が安定稼働する状態に戻り、電気料金は現状を維持する方針だ。
最終赤字を計上すれば3期ぶりとなる。電力販売の不振や燃料の転売損があった20年3月期(4億円の赤字)を大幅に上回る。年配当も8年ぶりに無配とする。市場予想平均(QUICKコンセンサス、5社)は960億円の最終赤字だった。

同日、記者会見した九電の池辺和弘社長は「今は苦しい時期だが、燃料価格や円安は緩和傾向にあり、方向性としては回復基調にある」と説明した。赤字幅は原発の稼働がなかった14年3月期(960億円の赤字)に次ぎ、過去5番目の大きさ。無配については「非常に申し訳ない」と陳謝した。
23年3月期の連結売上高は29%増の2兆2500億円、経常損益は1000億円の赤字(前期は323億円の黒字)を見込む。電力販売は堅調に推移するが、燃料費の増加が響く。12月時点で5000億円と前年同期の3.2倍に急増しており、通期では「変数もあるが、7000億円程度」(池辺社長)まで膨らむ可能性がある。

玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)はテロ対策工事の遅れにより22年9月上旬から3カ月間は3、4号機が共に停止していた。通期では原子力の発電量が前期比で3割減となり、経常損益を700億円押し下げる。急な燃料高で電気代への転嫁に遅れが生じ、外部から調達する電力の購入費もかさむ。
ただ、玄海3号機が22年12月に再稼働し、4号機も2月に発電を再開する。第4四半期(1〜3月)では原発3基の稼働を維持でき、同期間では経常損益で300億円程度の黒字を確保できる見通しだ。
電気料金の値上げは当面行わない方針だ。池辺社長は「来期は原子力の(安定)稼働も見込める。(現状維持で)いける所まで頑張る」と説明した。ロシアの資源開発事業「サハリン2」からの液化天然ガス(LNG)の調達状況については「1月分も調達でき、3月分を残すのみだ。(仮に途絶しても)大丈夫な対応をとっている」とした。
同日発表した22年4〜12月期の連結決算は売上高が31%増の1兆5675億円、最終損益は894億円の赤字(前年同期は359億円の黒字)だった。同期間で最終赤字の計上は8年ぶりで、赤字幅は過去3番目に大きかった。
九電では1月、送配電子会社からの顧客情報の漏洩が明らかになった。池辺社長は「電気事業の運営に疑念を抱かせる事態となり深くおわびする」と陳謝した。同社では産業用の電力販売でも、カルテルを結んだ疑いで公正取引委員会から聴取を受けている。池辺社長は「違反の疑いを持たれないようにすることが重要であり、これまで以上にコンプライアンス(法令順守)の徹底を図る」と説明した。