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ふくおかFG、続く拡大路線 福岡中央銀と10月統合へ

地域金融のいま

ふくおかフィナンシャルグループ(FG)は14日、福岡県が地盤で零細企業向けに強みを持つ福岡中央銀行との統合で最終合意したと発表した。10月1日の統合に向け、経営のあり方について議論を本格化させる。ふくおかFGは規模は小さいながら特色を持つ福岡中央銀を取り込み、大企業から零細まで機動的に金融サービスを届けられる体制を築く。

福岡中央銀行は1951年、福岡市と北九州市の無尽2社が合併して設立した正金殖産無尽が源流の第二地銀だ。総資産は約5700億円(2022年3月末)で、福岡県内に約40の店舗をもつ。

ふくおかFGは福岡中央銀の統合により、これまで福岡銀行がカバーできていなかった福岡県内の零細・個人事業主との接点が生まれる。日銀が経営改革に取り組む地銀に対して当座預金の金利を年0.1%上乗せする特別付利制度が収益を押し上げる効果もある。

福岡中央銀の取引先には新型コロナウイルス禍の影響を受けやすい零細企業や個人事業主が多いものの、22年末時点の不良債権比率は2.67%と新型コロナ禍前の19年末に比べ1ポイントあまり低下するなど経営に目立った問題はみられない。

ただ本業に加えてデジタル化に向けた投資を進めるだけの資本の厚みがなく、経営の効率化が進んでこなかった。本業の粗利益に対する経費の割合を示すOHRは8割台が常態化している。

両社は本部機能の集約や銀行事務の共同実施による業務効率化、ふくおかFGのサービスの活用などを通じ、中小企業金融の進化を図る。1月に統合に関する公正取引委員会の認可がおり、最終合意を結んだことで交渉は本格化する。

近隣の地銀を買収して収益を安定・向上させつつ、規模を拡大するのがふくおかFG流だ。07年4月、福岡銀と第二地銀の熊本ファミリー銀行(現熊本銀行)が設立したふくおかFGは日本最大の地銀グループにのしあがった。総資産は22年9月末時点で約29兆円と横浜銀行などを傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループを5兆円近く上回る。

06年に福岡銀と経営統合で合意していた熊本ファミリー銀は、多額の不良債権の処理で資本が傷み、00年に300億円の公的資金の注入を受けていた。その後も業績が上向かず、04年には頭取が引責辞任に追い込まれた。

一方、熊本ファミリー銀には当時熊本県内で2割ほどの貸し出しシェアを持つという魅力もあった。経営統合にあたっては、福岡銀が熊本ファミリー銀の公的資金を肩代わりして返済した。

福岡銀はふくおかFG設立の直前、同じく不良債権処理で苦しんでいた長崎県の中堅地銀、親和銀行を傘下にもつ九州親和ホールディングス(HD)と資本業務提携。ふくおかFG発足直後の07年には親和銀を傘下に収めた。

16年には長崎県のトップ行だった十八銀行とも経営統合で基本合意した。ふくおかFGのもとで力を付けた親和銀との競争で消耗したほか、地盤とする地域の人口減少に直面していた。

十八銀との統合は寡占化の懸念で公取委の審査が長引き、一時無期延期となった。それでも一部取引先を他行に譲る「債権譲渡」をへて、20年には十八親和銀行の発足にこぎ着けた。

ふくおかFGは熊本銀、十八親和銀ともに、看板を残して地域と向き合いつつ、基幹システムや与信管理の方法、商品やサービスの企画などをグループで統一し、総合力を高めることで収益を安定させてきた。福岡中央銀の取り込みにより九州最大都市の福岡で地盤をさらに強固にするふくおかFGの次の一手が注目される。

(坂部能生)

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