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京都は温泉の宝庫? 山腹や市街地に多様な泉質

とことん調査隊

京都市内で温泉に入れると聞いた。京都といえば神社仏閣や花街、京料理といったイメージが強いが、調べてみるとたしかに市内各地に温泉施設が点在している。関係者に取材した。

JR京都駅から比叡山に向かうバスで40分、山の中腹に「北白川天然ラジウム温泉 えいせん京」の看板が見える。免疫力を高めるなどの効用があるとの評判を耳にして、3代目の藤田恒二郎社長に源泉を案内してもらった。

50メートルほど裏山を登ると、林の中に3カ所の小屋があった。筒状のパイプで引いた源泉を飲むと無味無臭でまろやか。12~13度の冷泉で、ボイラーで70度まで温めるという。「岩盤に含まれたラジウムは熱することで気体(ラドン)となり水に溶けるんです」と藤田社長。

北白川温泉は1954年、社長の祖父・忠守さんが山道で源泉を見つけたのが始まりだ。当時から一帯には湧き水が出ており「お助け水」として胃痛や止血に効くといわれていた。水量は十分で、調べてみるとラジウムが多量に含まれていた。

クリスチャンの忠守さんは温泉を開き人の役に立てるのが使命だと思い、公有地を買ってヘルスセンターとして開業。やがて宿泊営業も始めた。2018年には10カ月に及ぶ改修が完了。日帰り入浴に毎週訪れる市内からの常連だけでなく、旅行サイトの口コミ評価で全国1位を獲得する宿としても人気だ。

天狗(てんぐ)で有名な鞍馬の山里にも硫黄の湯の花を傷口に塗って治療するといった湧き水の歴史が伝わる。唯一の温泉施設「くらま温泉」の近藤諭支配人によると明治末、一帯の茶畑から出ていた湧き水を風呂にしたのが鞍馬温泉の発祥。施設は1987年の開業だが、それ以前も「鞍馬温泉」という施設が営業されていたという。源泉は約16度の冷泉。北白川と同様、自然の恵みを生かした温泉だ。

とはいっても京都市内の温泉の知名度はまだ低い。2019年京都観光総合調査によると、来訪動機(複数回答可)を温泉と答えたのは日本人で1.3%、外国人で12.1%だった。しかし京都市内には30近くもの源泉がある。

京都で温泉を――。15年には京都市と温泉施設が「京都市温泉観光活性化協議会」を立ち上げた。同協議会のサイトを閲覧すると17軒の温泉施設が地図にある。北部には「大原温泉」、西部には「嵐山温泉」や「京都桂温泉」、南部には「桃山温泉」と点在。京都駅近くにも1軒あった。

京都駅から徒歩3分、1950年創業「京湯元ハトヤ瑞鳳閣(ずいほうかく)」は2014年のリニューアル時に地下900メートルの源泉を掘った。経営するハトヤ観光(京都市)の岩井一路社長は「分厚い岩盤があり、600メートルからは1日1メートルほどしか掘削が進まなかった」と振り返る。京都には豊富な地下水があるが、十分な温度の源泉を確保するためには1000メートル近く掘る必要がある。

温泉や都市史に詳しい京都府立大学の松田法子准教授は「比叡山などの山際の湧き水には温泉成分となる多種の物質が長い時間をかけて溶け込んでいる」と京都温泉の特徴を説明する。北白川の「放射能泉」やくらまの「硫黄泉」は典型だ。限定されたエリアに多くの旅館や入浴施設がひしめく温泉地とは対照的に分散している。「京都はいわゆる『温泉地』ではないが、都市と郊外を往来する立地が魅力的だ」と話す。

市内には自家源泉を持つ高級ホテルが増えている。19年には「アマン京都」、20年秋には「ホテルザ三井京都」が開業。「ウェスティン都ホテル京都」も21年にスパ施設ができる。多様な泉質を訪ねて市域観光するのも楽しいかもしれない。

(村上由樹)

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