観光誘客、コロナを好機に 香川日経懇話会
四国の売り方

香川日経懇話会は24日、連載企画「四国の売り方」をテーマにしたパネルディスカッションを高松市内で開催した。観光やブランディングに知見をもつ専門家が、観光誘客について議論した。新型コロナウイルスの影響で観光需要は停滞しているが、登壇したJR四国の半井真司会長は「密を避けるという意味では、コロナは四国にとってチャンス」と述べた。
ディスカッションには半井氏の他、日本政策投資銀行の岡井覚一郎・四国支店長、インスタ映えすると話題になった父母ケ浜(香川県三豊市)の情報発信を手掛ける三豊市観光交流局の石井紫チーフマネジャー、4県地銀が立ち上げた地域商社「Shikokuブランド」(高松市)でブランディングを担当する香西志帆ディレクターが登壇した。発言要旨は以下の通り。
半井氏「四国は人口が減少し、地域経済が縮小しかねないという構造的な課題があり危機感をもっている。観光誘客によって関係人口を増やし、四国全体が連携し一体となって進めていかないといけない。コロナでよりスピード感が求められている」
「四国は一つ一つ、といわれるくらい地域ごとにしっかりとした顔がある。それぞれが独自性をもち、魅力ある自然と文化が残っている。そして共通するのがお遍路で培われたお接待の精神だ。四国観光の魅力はなんといっても人にある。列車に乗っていて沿道から手を振ってもらうなど、期待していなかった部分でのおもてなしが感動につながる」
岡井氏「観光客が何を求めているのか知ることも重要で、海外の富裕層に注目している。日本文化や歴史を深く知って自分を磨きたいという欲求があり、四国はその点で親和性がある。彼らが求めているウエルネス、アート、持続可能性などは四国がもっているポテンシャルに近い」
「訪日客が興味を持つのは地域住民の日常であり、意識せずしていることに文化の発露があると考えている。なぜここではこの食材を使うのか、なぜこのお酒はこのような味なのか、といったことだ。四国固有の文化を大切にすると同時に、土地の『当たり前』をしっかりと語れることが観光の素材になる」
石井氏「地域と観光客をつなぐ情報発信については、行ってみたいと思える写真や映像があれば人は来てくれる。風景の中に被写体が一人いるだけで、自分もそこにいるような感覚になることができる。地域のアイコンとなるイメージをつくることが大切ではないか」
「観光客の期待に先回りして応えれば満足度は高まる。父母ケ浜ではきれいな写真を撮れる条件をネットで公開し、混雑を見越して仮設トイレの設置も進めた。多くの人が訪れたことで、地元の人が地域を見る目も変わったと思う」
香西氏「地域の人は、県外、海外から人が来て地元に自信を持つ部分がある。地域の魅力を考える際には、初めて来る人がもつ『素人の感覚』が大切で、プロになってはいけない。地元を巡ってみると知らない良いところはたくさんある」
「世の中には大量の情報があふれており、『行きたくない』から『行きたい』に認識を変えてもらうための仕掛けを作るのがブランディング。四国のイメージを象徴するようなシンボルを作れれば、世界に向けて四国を発信していくことができるのではないか」
同懇話会への入会申し込み、問い合わせは日本経済新聞社高松支局内の事務局(電)087・831・3344まで。