はるやま、テレワーク向け衣類強化 ウィズコロナ対応
紳士服大手のはるやまホールディングス(HD)は、新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込む業績の回復を狙い、ウィズコロナ対応の衣料販売を強化する。在宅時などテレワークする際に適したファッションを「テレウェア」として売り出し、新常態でのビジネスへの対応を急ぐ。

テレワークする際にスーツを着るのは窮屈、かといって部屋着で映像配信の会議に出るわけにもいかない――。そんなビジネスマンらに向けた商品を前面に打ち出す。
はるやまHDが本社を置く岡山市の住宅地に立つ旗艦店、岡山青江総本店。正面エントランスを入った1階店頭には「OFFでも使える」のキャッチフレーズとともに、カジュアル性の高いジャケットやパンツがズラリと並んでいる。春先まで中心商品だったスーツやフォーマルウエアは2階へ。「ジャケット、パンツは通常のスーツよりも品物が動き始めた」。三代木孝輔店長は並べ替えの効果を強調する。
1階には「きちんと楽ちん『テレウェア』」と題する本も並ぶ。同社の治山正史社長が書き、10月末に発刊された。「テレウェア」は「〝きちんと〟見えて〝楽〟な、テレワークに適したウエア」(治山社長)の造語だ。オンとオフの切り替えが利き、ビジネスマナーを守り、洗濯などの扱いも簡単で着心地がよい特長を併せ持つ。同書では50のコーディネート例をカラー写真入りで紹介。「テレワーク時の服装に戸惑う顧客の声に、応えようとしたのが発刊のきっかけ」(治山社長)という。

2019年から同社はネット通販などとの競合に対応し、実店舗の魅力アップを進めてきた。店内にカフェやキッズコーナー、クリーニングなどのコーナーを併設する「ほっとひと息ステーション」づくりを推進。来店を促す戦略で、23年までに100店舗に広げる目標を立て、昨年12月末には52店舗にまで増えた。そこに新型コロナの直撃を受け、今月に新たに1店舗を改装するまで増設はかなわなかった。
顧客の外出自粛、在宅勤務の広がりによるスーツ需要減退は進み、11月下旬には21年3月期の連結最終損益で35億円の赤字予想を発表。売上高は前期比20%減の405億円、営業損益は19億円の赤字を見込む。大型サイズ専門店、若い世代向けの専門店も含め、今春から7店を閉店した。
同社は「新型コロナの影響は当面継続する」と判断。ウィズコロナの新しい生活様式に対応する切り札として「テレウェア」を掲げ、品ぞろえを強化して売り上げ拡大をめざすことにした。まず本拠地の岡山で健康応援ウエアのPRやテレウェアのコーディネート提案に取り組み、全国展開やネット販売につなげる。7月からは顧客と店の売り場をオンラインでつなぎ、好みに応じた商品を店員が勧める「オンライン・ファッション・コンシェルジュ」(要予約)も一部店舗で試験的に進めている。(田村雅弘)