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大阪・富田林のすだれ、竹見極め 確かな色合い

匠と巧

編み上げたすだれをつるし「縁(へり)」を縫い合わせていく=大岡敦撮影

神社やお座敷などでみかける簾(すだれ)。起源は飛鳥、奈良時代とされ、万葉集にも記述があるほど古くから日本家屋に定着してきた。なかでも金剛葛城山系の麓、富田林・河内長野の地で生まれるすだれは「大阪金剛簾」と呼ばれる逸品だ。質の良い竹から確かな職人技でつくられており、すだれとしては全国で唯一、国の伝統的工芸品に指定されている。

数少ない工房の一つである杉多製簾(せいれん、大阪府富田林市)を訪ねた。

伝統工芸士の杉多公一社長(61)が、地元の林で切り取った真竹の盛り上がった節をカンナで滑らかになるよう削り取っていく。包丁を上から下に動かして竹の表面をはぎ、縦に半分、また半分と割る。さらに竹の皮と実を分ける。

厚さ1㍉ほどとなった皮を整えて竹ひごとし、製品に向く素材を選別する。天然素材のため、色合いや節の感覚はまちまちだ。出来上がったすだれの表に、伝統にのっとって「くの字型」の模様を描くよう「色合いや、節間の流れを想像しながら見極めていく」(杉多社長)。選別した竹ひごを順番を間違えないよう一本一本編み機に入れて編み上げる。編み糸は綿糸だが、高級品では絹糸を用いる。

次に、すだれにつける織物生地を、手ばさみで真っすぐに裁断する。ゆがまないように織物生地の癖を見抜いて作業をする。幅6~10㌢ほどの縁(へり)にして、つるしたすだれに糸で縫い付ける。「少しでもずれるとすだれや縁がまがってしまう」(杉多社長)。集中力を切らさず、根気よく手を動かす。

仕上げに金具など装飾品をつけると完成だ。伝統の技から生み出されたすだれには神々しさすら感じる。確かな技術を背景に、同社は多賀大社(滋賀県多賀町)や太宰府天満宮(福岡県太宰府市)など全国の神社にすだれを納めている。

大阪金剛簾のもととなる富田林のすだれづくりは江戸時代に始まったとされる。流れ着いた武士が竹籠や竹製品を作り村人に教えたという。良質な竹は地元に大量にあった。竹細工製造業は明治から昭和にかけて成長、戦前の富田林市内には約350社が集積していた。だが生活様式の洋風化やエアコンの普及などで需要が減少。今も残る業者は数社にとどまるという。

杉多社長は幼い頃から家業のすだれづくりを手伝っていた。夢中で働いているうちに、気がついたら周りの職人が60~70歳代に。「このままでは技が途切れてしまう」と危機感を抱いた。将来をにらみ、すだれ製作が一通りできる自分が改めて職人の技を学び、腕を確かなものとした。

2015年には大阪簾工業協同組合の理事長に就任。大阪府・市や富田林市などで構成する大阪伝統工芸品展推進委員会などが今月、府立中之島図書館(大阪市)で実施した伝統工芸品の展示にも協力した。すだれ振興へできることはする方針だ。自社で新たな人材を採用して、伝統の技を次の世代に継承できないかと考えている。 (皆上晃一)

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