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富山地方鉄道、バス値上げやタクシー撤退 収益厳しく

富山地方鉄道(富山市)が収益改善を急いでいる。ドル箱の高速バス路線の料金を上げるほか、タクシー事業から撤退する。新型コロナウイルスの感染拡大で利用者が急減し、2020年4~9月の半期報告書に継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)が付いた。不採算の鉄道事業も抜本策が必要になりそうだ。

高速バスの富山―金沢線はドル箱路線のひとつ(JR富山駅前)

「住民向けの短距離路線と違い、高速バスは利益を出すことが大前提。利用者が減れば単価を上げるしかない」。富山地鉄の幹部は4月1日に実施する富山―金沢線の運賃値上げについて語る。片道は1100円、10枚つづりの回数券は1万円になる。上昇率はそれぞれ12%、20%と大きい。

富山地鉄は1930年の設立で、富山県内に本社を置く鉄道・バス事業者としては最大規模だ。高速バスの富山―金沢線は通勤客や買い物客が多く、利用者数はコロナ禍前の5~6割にとどまるもよう。

同区間で競合する鉄道の運賃は1240円のため、まだ優位にあるものの、安さで集客する戦略を改める。緊急事態宣言が続く東京都や、観光客主体の岐阜県高山市に向かう便は運休を続けて費用流出を抑える。

タクシー子会社の富山地鉄タクシー(富山市)は3月末で事業を停止し、清算する。21年3月期の売上高は前期の3分の1程度の6000万~7000万円にとどまる見通しで、継続を断念した。鉄道も富山市内と立山駅(富山県立山町)、宇奈月温泉駅(同県黒部市)などを結ぶ観光客の多い列車を減便する方向で検討している。

富山地鉄が北陸財務局に提出した20年4~9月の半期報告書によると、連結売上高は前年同期比53%減の27億円、最終損益は26億円の赤字(前年同期は3億4000万円の黒字)だった。高速バスなど自動車事業の売上高は62%減の10億円、鉄道事業は45%減の4億9600万円と大幅に落ちこんだ。

収益改善策を相次ぎ出すのは、半期報告書に「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在」と記載されたためだ。同社は資金の一部をシンジケートローンで調達しており、連結純資産を「前年同期比75%以上に維持できなかった場合、借入金の全額返済を求められる可能性がある」との財務制限条項がついている。20年9月末の純資産は19年9月末の66%にとどまる。

常勤取締役の報酬を22年3月まで20%カットするほか、収益改善策を織りこんだ中期経営計画の策定に入った。ただ、先行きの売上高の変動は読みづらく、人件費などをどうはじくか苦悩している。コロナ禍前は人手不足で、バス運転手らの人員に余裕はなかった。「需要がある程度戻ったときにヒトがいなければ、収益回復は難しい」(幹部)

資金繰りのため借入金は膨らんでいる。20年9月末の連結の長期・短期の借入金は65億円と20年3月末から57%増えた。同社に融資する金融機関を納得させる計画をつくれるか、正念場を迎えている。

赤字続く鉄道事業、経営の重荷に

富山地鉄の経営に重くのしかかっているのは鉄道事業だ。国土交通省の2018年度の鉄道統計年報によると、同社の鉄道の営業キロ数(路面電車除く)は約93キロと隣県の石川県で鉄道を営む北陸鉄道(金沢市)の4.5倍。一方、旅客運輸収入は約14億円と2.7倍にとどまる。

鉄道事業は人口減などで厳しい経営環境にある(富山市の電鉄富山駅)

富山市から立山駅などへ向かう路線は橋梁や険しい自然に囲まれた場所も多く、線路の維持コストがかさむ。鉄道事業は「恒常的に赤字」(同社)といい、19年3月期は9300万円、20年3月期は1億1800万円の営業赤字だった。

鉄道の赤字を高速バスや路面電車の収益で埋めてきたが、今回のように高速バスなども苦しくなると補填できなくなる。新型コロナが収束したとしても、鉄道事業をどう位置づけるかは重要な課題となる。

公共交通を重視したまちづくりを進めてきた富山市は、レール交換や路盤の改良の費用を補助してきた。同市交通政策課は「人口減で事業として厳しいことは承知している。利用者の増加策など活性化を支援したい」と説明する。

公共交通に詳しい関西大学の宇都宮浄人教授は「運賃収入だけで鉄道が黒字化している首都圏などは世界でもまれな例。地方では国や自治体が鉄道を社会インフラとして支えたうえで、民間のノウハウを生かすべき」と話す。線路などインフラ部分を公的機関、運行を民間が担う上下分離方式の採用も一案と指摘する。(国司田拓児)

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