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「健康長寿」のヒント、個の解析にあり 伊坂忠夫さん

関西のミカタ 立命館大学副学長

いさか・ただお 1962年京都市生まれ。92年立命館大理工学部助教授、2003年教授、10年スポーツ健康科学部教授。19年には副学長に。18年からは大学間の横断組織「大学スポーツコンソーシアムKANSAI」の会長も務める。

■立命館大学の副学長、伊坂忠夫さん(58)はスポーツ科学の専門家。動作解析などで得られたデータを競技力アップだけでなく、一般の人の身体機能の維持、向上にも役立てる。高齢化社会に加え、新型コロナウイルスの影響で健康への意識が高まるなか、研究の重要性は増している。

動作を解析し現状をみたうえで、どう変えればその人の身体機能を向上できるかを考える研究をしている。前提となるのは「人と自分は違う」。体つきや体の動かし方は人それぞれ。同じトレーニングをしても効果のある人とそうではない人がいる。テクノロジーを使えばその人に合うトレーニングを手助けできる。ケガも防げ、効率も良くなる。

例えば、立命館大学は東洋紡などと共同で、着用すると心拍数などの身体データを計測できる「スマートウエア」を開発した。以前は全員に同じ距離を走れなどと指導するトレーニングが多かったが、これを使えばその年代の最大心拍数の7割で走るといった運動が可能になる。

走れる距離や速度は人によって違うが、周りよりスピードが遅くても、心拍数でみれば同じ負荷がかかっている。他の人のスピードに合わせて走り、オーバーワークになることも防げる。自分のペースで能力を向上できる。

カメラを使い、目の動きや表情を解析すれば感情もわかる。身体データの計測と組み合わせ、どんな言葉をかけるとパフォーマンスが向上するかも分析可能になる。現代社会では健康寿命を延ばすことが大事。楽しみとしてスポーツをしながら、先端技術を使い、意識しなくても「結構、体が動いたな」と感じてもらえる仕掛けをつくりたい。

■大学スポーツの価値向上を狙い、関西圏の20以上の大学などで構成されている横断組織「大学スポーツコンソーシアムKANSAI」(KCAA)の会長も務める。

大学スポーツはこれまで「する」面ばかりが注目されてきた。発展には「する」以外にも「見る」「支える」という循環が必要になる。

この循環をつくるため、KCAAでは学生の「頑張りの可視化」に取り組んでいる。大学でのスポーツ活動のモデルとなる学生への表彰がそのひとつ。選手だけでなく、マネジャーなども対象に含む。

チャンピオンになる人は1人しかいない。だが、頂点を目指して頑張る人は山ほどいる。その過程のなかで学生がどう成長したのかを見えるようにする狙いがある。「する」ところだけではなく、練習の過程や日常生活も地域の人や企業などに見てもらい、支えてもらえるようにしたい。そうなれば大学スポーツに新しい価値が生まれる。各大学は様々な研究をしているが、大学を知らないとそれも伝わらない。まずはスポーツを入り口に大学を知ってもらう。そこから産官や地域との連携につながるのではないか。

学生スポーツの価値向上のための取り組みにも力を注ぐ

■京都生まれ。故郷の魅力を「千年の蓄積があるところ」と語る。

ただ古いものを守るだけではなく、新しいものを取り入れないと、千年も持たない。変えられるところは変えて京都は発展してきたのだろう。スポーツでも用具メーカーが多いように、関西はイノベーションが起こる歴史を積み重ねてきた。日本の天気と歴史は西から変わる。関西から新しい風を起こし、社会が元気になれるといい。

今後、重要になるのは多様性。学校の授業も一斉に板書をノートに取るのではなく、進度に応じ、おのおのに合った方法で勉強をしていく形になるだろう。大学もシニアの人を新入生で迎える世界になる。定年退職もなくなり、働き方も変わるのではないか。

その時に自分の体の動き方を知ることは重要で、そこにスポーツ科学の成果が生かせる。その研究の中心を大学が担っていければと考えている。

(聞き手は関根慶太郎)

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