/

1万分の1秒、命運見極め 阪神競馬場の決勝写真撮影

匠と巧

複数台の特殊なカメラで着順判定用の写真を撮影する=大岡敦撮影

手に汗握る競馬のゴール前。鼻面を並べたきわどい勝負も珍しくなく、写真判定に持ち込まれることも多い。日本中央競馬会(JRA)の決勝審判が参考とする判定用の「決勝写真」は、特殊な技術を使ったカメラで撮影される。

シャッターを切った瞬間を面で捉え、四角形の画像を得る「エリアセンサー方式」の一般的なデジタルカメラと違い、決勝写真は「ラインセンサー方式」の機械で撮影される。レンズの内側に幅0.02ミリメートルの線状のセンサーを設けてゴールに合わせておき、その線上を通過する馬を1万分の1~1万分の2秒ごとにスキャンする手法だ。

仕組みとしてはコピー機の読み取り装置と同じ。コピー機はラインセンサー自体が動いて原稿を読み取るのに対し、決勝写真のカメラはセンサーを固定し、動く馬を撮影していく。ゴール地点には細い鏡も設置されており、鏡に反射する馬の姿も撮影される。そうすることで馬が重なり合ってゴールした場合でも、位置がわかりやすくなる。

JRAがウェブサイト上などで公開している決勝写真では、普通の写真のように馬や騎手の形が認識できるようになっている。ラインセンサー方式で連続して取り込んだ細い線状の静止画を一列一列、時系列に並べることで馬の姿を表している。

陸上などほかのスポーツでも判定用写真を撮るが、1万分の1秒ごとに撮影するJRAのカメラの精度は高い部類に入る。「海外の競馬と比べても、劣っていないのは間違いない」と決勝審判を務める佐藤晴紀さん。その分、画像に含まれる情報量も多く、1レースで2ギガバイトもの容量になる。

JRAの決勝審判は3人体制で執務する。スタンド上層階の部屋に、ゴールに向かってひな壇のような席が配置され、縦に3人並んで座る。それぞれの席の横には決勝写真が見られるモニターが設置されている。

まずは目視で全馬の到達順位を一人ひとりがノートに書き取って読み合わせる。モニターにはすぐに決勝写真が表示され、読み合わせが終わった後、この画像で出走全馬がゴールを通過したのを確認してから、着順掲示板に馬の番号を表示する。きわどい差になった場合には写真を参考に3人が話し合って判定する。

ファンのお金がかかる判定だけに「絶対に間違えてはいけない」と佐藤さん。「一方で次のレースも迫っているし、いかに早くお客さんに情報を提供できるか。迅速、かつ正確にという点で決勝写真の役割は重要」と語る。

阪神競馬場では、決勝審判の部屋のひとつ上の階に決勝写真の撮影用カメラが置かれている。2013年にデジタル化される前はフィルムで撮影されていた。

フィルム時代はカメラのある部屋を暗室にして1分ほどかけて現像し、下の決勝審判室につながるパイプを使って決勝審判にフィルムが渡されていたという。当時と比べると「馬番を掲示板に出す時間は数十秒単位で早くなっている感覚がある」と佐藤さん。特殊なカメラと、その技術の進歩が熱戦を支えている。

(関根慶太郎)

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン