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松本幸四郎、南座で「顔見世」 上方歌舞伎に東京式

文化の風

「廓文章 吉田屋」で伊左衛門を演じる松本幸四郎

京都の師走の風物詩、歌舞伎の「吉例顔見世興行」が5日、南座(京都市)で始まる(19日まで)。上方歌舞伎の代表作ともいえる「廓(くるわ)文章 吉田屋」で主人公の藤屋伊左衛門を演じる松本幸四郎に意気込みを聞いた。

--コロナ禍以降、史上初のオンライン歌舞伎公演「図夢歌舞伎」など新たな企画に取り組んだ。

「春先にコロナの状況が厳しくなった時、真っ先に頭をよぎったのは顔見世が途切れてしまうのか、ということ。戦時中も続いてきたものを我々が途切れさせるわけにいかない。コロナ禍で工夫が必要な今こそ興行形態、演出など大胆に手を入れられるタイミングでもある。たくさん持っている演目を今、どうすれば上演できるか。それを考えると歌舞伎は進化する。そんな時ではないか」

--今年の顔見世は上方の名人が演じてきた「吉田屋」に東京式演出で挑む。

「自分がずっとやり続けたいと思っている演目。上方の芝居が好きな東京の役者である自分にしかできない上方歌舞伎はこの方向かなと思っている」

「(上方歌舞伎に親しんだ客の多い)南座で吉田屋をやるのはすごく勇気がいること。名古屋の御園座で初演以来、名古屋より西ではやらないと決めていた。今回はコロナ下での様々な条件があって、南座で吉田屋をということになったので(関西以西で上演するのは)正直に言えば、これが最後になってほしい」

--上方歌舞伎に積極的に取り組んできた。

「完璧なヒーローや二枚目の物語が多い江戸に対し、上方は欠点もある人たちの人間くささが魅力。東・西の歌舞伎(の特徴)が明確にあってほしいし、どちらも楽しめるのがいい。それは、劇場での公演と図夢歌舞伎(片方だけあるよりも)、それぞれ違う面白さを並行して楽しめる方がいいのと同じこと」

--坂田藤十郎さんが亡くなった。

「山城屋のおじさま(藤十郎さん)の『雁(かり)のたより』を見た時の衝撃で、上方歌舞伎を好きになった。ご恩返しする前に亡くなられて、残念。教えていただいたことを精いっぱいお見せすることで、おじさまが生き続けることになる」

 「吉例顔見世興行」を前に、京都・南座で行われた「まねき上げ」(1日)

コロナ対策、異例の体制

今回の顔見世は公演期間を例年の半分に短縮し、通常の昼・夜公演を3部制とした。松竹の迫本淳一社長は「顔見世興行は江戸時代から続く歌舞伎の伝統のエキス中のエキス。芝居の神髄をしっかりお見せしなければ」と力を込める。

制作も異例の体制だ。スタッフは例年の250人体制から150人に縮小。50人のユニットを3つ設けて1ユニットごとに制作を完結させ、出演者やスタッフの感染リスクを抑える。

京都公演ならではの難しさもある。「楽屋でも人との交流を避け、出番が終わればホテルという生活で精神的にも疲れが蓄積する。長期間の公演は難しい」(安孫子正副社長)。今後の地方公演のあり方を探る。

本来、見応えのある演目を「長時間たっぷりと楽しんでいただくのが顔見世興行」(同)だが、今年は各部2時間前後とコンパクトにまとめる。演目は各部とも名優の重厚な演技が楽しめる芝居と若手花形の舞踊を組み合わせて構成した。尾上右近、片岡千之助ら20代のフレッシュな面々も並ぶ「若い世代の一座を組むことができた」(同)。

顔見世の伝統がかえってハードルになっていた観客にとっても、例年より手ごろな料金、時間で歌舞伎の「神髄」を楽しむよい機会だろう。長きにわたり12月の南座を彩ってきた坂田藤十郎が亡くなった今年。現状、可能な形で伝統をつなぎながら、将来に向けた種をまく公演と言えそうだ。(佐藤洋輔)

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