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文楽、師弟・父子が主役級で共演 若手飛躍へ好機

文化の風

前列右から桐竹勘十郎、吉田一輔、吉田玉男。後列は弟子たち。左端は今回の公演を企画した吉田玉翔。

人形浄瑠璃文楽で人形遣いの師弟・父子がともに主役級で共演する公演「文楽夢想 継承伝」が8月7日に国立文楽劇場(大阪市)で行われる。通常は主に足を遣う若手が師匠と舞台で並び立つ。下積みの長い文楽の世界にあって、若手には貴重な成長の機会となりそうだ。

長い修業期間

上演するのは桐竹勘十郎と弟子の勘介による「二人三番叟(さんばそう)」、吉田一輔と息子の簑悠(みのひさ)の「傾城(けいせい)阿波の鳴門・順礼歌の段」、吉田玉男と弟子の玉路(たまみち)の「五条橋」の3演目。若手はいずれも入門から10年前後、今後の飛躍が期待される20代から30代の3人だ。

人形遣いは「足遣い10年、左遣い10年」ともいわれる長い修業期間を経て、主遣いへとステップアップする。年齢・キャリアに大きな差のある人形遣いが重要な役で同格の主遣いとして共演する機会はまれだ。数少ない師匠との共演を吉田玉男は「思い切ってやれと言われたが遠慮してしまった。それでも大変勉強になった」と振り返る。

「とにかく楽しみ」。若手3人に意気込みを尋ねると全く同じ答えが返ってきた。通常公演ではまだ遠くにある主役やそれに準じた役の主遣いというチャンス。師弟間でも「見て盗め」が基本の世界で「まとまった時間、直接指導を受けられる機会も貴重」(簑悠)だ。緊張や不安を感じつつも、成長のチャンスが巡ってきた期待感がそれらを上回る。

「憧れの存在」という父一輔と共演する簑悠は「いつも足遣いとして横についている父の人形に、今回は正面から向き合う。どんな風に見えるのか、想像するだけでわくわくする」。父子ともに4月に引退した人間国宝、吉田簑助の門弟だ。

文楽界では珍しく4代続けての人形遣いの家系にある簑悠は「師匠の芸はもちろん、父の芸を受け継ぎたいという思いも強い。公演後は見える物が違ってくるはず」と話す。今回演じるのは親子の別れがテーマの物語。母お弓を一輔が、娘おつるを簑悠が遣いストーリー上の親子と人形を遣う実際の親子が重なる趣向だ。

8月3日まで文楽劇場では「夏休み文楽特別公演」が開催中。若手3人も足遣いなどで出演している。本公演にも全力で取り組みつつ「劇場からの行き帰り、浄瑠璃を聞きながら役のイメージを作り、日々考え事の8割を(文楽夢想で演じる役のことが)占めている」(勘介)。

「今回のお話をいただいて意識が変わった」と話すのは玉路。「目の前にある足遣いの仕事だけを考えていたが、今は常に主遣いをイメージし、そこに日々の足遣いの勉強を関連づけるようになった」とポジティブな変化が表れている。

意欲維持が課題

文楽の技芸員は一人前となるまで10年単位の時間を費やす。若手が意欲を維持しやすい環境づくりは大きな課題だ。企画が定着すれば、若手技芸員にとってキャリア形成の大きな道しるべにもなる。今回の企画を発案した人形遣いの吉田玉翔も「1度で終わらせず4回5回と継続的にやっていきたい」と意気込む。

世襲制度のない文楽の世界。大きな名跡を主に血縁で継承する歌舞伎などと比べると舞台上に演者同士の関係性を見いだして鑑賞する機会は少ない。まだ見ぬ若手の技に師匠と通じるものを探すもよし、若手3人の10年後、20年後の姿をベテランと重ねるもよし。観客にとっても新たな鑑賞の楽しみを発見する機会になりそうだ。

(佐藤洋輔)

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