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「平成美術」展、バブルと災害 社会を再考

文化の風

1991年の体験型作品「DIVINA COMMEDIA」を再構成したインスタレーション 2021年、作家蔵 (c) TOWATA + MATSUMOTO

「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989-2019」が京都市京セラ美術館で開催中だ。美術評論家の椹木野衣が企画・監修し、バブル(うたかた)経済とその崩壊、相次ぐ自然災害を軸に、様々な形で共同制作された作品が集められた。全14組のうち5組の作家が関西から参加。作品と社会の関係のはざまに平成という時代が浮かび上がってくる。

高揚と沈静が交錯

展示は10年ごとの3章に見立てて構成。重点的に関西の作品を扱うのが「第1章 うたかたの時代」。「DIVINA COMMEDIA」は1991年に神戸市で行われたメディアアートの先駆的作品だ。参加者はゼリーで満たされたプールに体を浮かべ、ストロボライトと電子音を浴びる。ダンテの神曲になぞらえた「死と再生のビジョン」を提示する展示だった。

今展では暗幕で閉鎖した空間に当時の映像と音響で作品世界を再現、鑑賞者は寝椅子で追体験する。ブラックライトの青を基調とする映像がストロボのように明滅し、電子音が高まると、高揚と沈静が交錯するような感覚に陥る。「空想、イメージとしての大量死から着想した」とメンバーの松本泰章。現在の視点では当時の参加者が着る防じん服にテロ、地震、原発事故のリアルな光景が重なる。

そのほか、斬新な映像インスタレーションなどで高く評価されたアートユニット、Complesso Plasticoが過去の作品を再構成した作品で参加。様々な社会システムをターゲットとして活動する匿名プロジェクト、IDEAL COPYは貨幣制度を扱ったインスタレーションなどを出品している。

バブルの余韻残る平成初期の作品群は哲学的・観念的な命題を扱いつつ、新しい技術やアイデア、音楽など他ジャンルの影響を取り込んだ刺激的な表現が目立つ。「当時は作家にも未整理だった混沌が、30年後の文脈で整理され直接現在につながる」(椹木)。「その後の現代美術にも影響を残し」(同)ながら、再評価の機会が乏しい作品に椹木は改めて光を当てた。

身近な題材扱う

2000年代の「第2章 うたかたから瓦礫へ」はアートユニット、contact Gonzoの映像作品を展示。ダンス・パフォーマンスによる「接触」を起点に、そこから生まれる空間や環境との関係性を扱う。10年代「第3章 瓦礫の時代」には事故で亡くなった美術作家の作品を友人らが再現する「國府理『水中エンジン』再制作プロジェクト」が名を連ねる。

國府理「水中エンジン」redux(2021年、國府克冶氏蔵)

「水中エンジン」は水槽内につるしたエンジンを燃焼させるインスタレーションで、今展には遺(のこ)された資料などを基に再現した作品を展示。無機質な白い空間で武骨なエンジンに対峙すると、そのあわいに作者と再制作メンバーの不在/存在が漂うよう。「作品とは」「作家と作品の関係とは」といった根源的な問題も内包する作品だ。

00年代以降の2組は身体や遺された作品という身近で具体的な題材を扱う。平成初期の3作と並べると日本の美術、ひいてはこの国が、観念的な題材に取り組む余裕を失ったようにも、身近な差し迫った存在に着目する視点を獲得したようにも見えてくる。

展示は「平成美術の正史という解答ではなく、平成の美術とは何かという問い」と椹木。鑑賞者個々の平成への視座によって、多様な平成日本像が立ち上がる。4月11日まで。

(佐藤洋輔)

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