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華やかな「道行」、清治が先導(文楽評)

鶴澤清治文化功労者顕彰記念

2部の「義経千本桜」道行初音旅

1月の大阪・国立文楽劇場は「鶴澤清治文化功労者顕彰記念」を謳(うた)う初春文楽公演。昨年の錦秋公演に続き3部制で行われ、文楽の三味線弾きとして初の顕彰を受けた清治は2部に出演。「道行初音旅」で慶事にふさわしい華やかな一幕を、自らが中心となって繰り広げている。もう一本は「碁太平記白石噺(ごたいへいきしらいしばなし)」。

前後にも時代物の名作古典が並んだ。1部は「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」三段目。丞相(しょうじょう=道真)左遷の原因を作ってしまった桜丸の自裁を描く。前半の「茶筅酒(ちゃせんざけ)」は父・白太夫の古稀(こき)を祝う穏やかな情景で竹本三輪太夫・竹澤團七が3人の嫁たちを相手にした飄逸(ひょういつ)な好々爺(こうこうや)ぶりを表現。その白太夫が「喧嘩(けんか)」では一転して厳父の顔を、「桜丸切腹」では子を死なせる親の苦衷を、それぞれ滲(にじ)ませる。人形は吉田玉男が場面ごとに変化する白太夫の心情を情趣豊かに描写して巧妙。老役での演技に新境地を示した。桜丸は米寿を迎えた吉田簑助。若さゆえの失態が大事を招き、悔恨が早すぎる老成をもたらした陰影深い青年像を見せた。

3部は「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」四段目。きらびやかな御殿を舞台に非日常的とも言える物語が展開する。「鱶七上使(ふかしちじょうし)」は豊竹藤太夫・鶴澤清志郎。藤太夫が鱶七の野趣に満ちた人柄を克明に描写する。官女たちとのやり取りには際どい台詞(せりふ)もあって愛嬌(あいきょう)も感じさせた。

「金殿」はお三輪を軸にクライマックスにふさわしく気迫にあふれる場面。竹本錣太夫(しころだゆう)・竹澤宗助が官女たちにさいなまれるお三輪の哀れさと、鱶七に刺された後に真実を知って喜びながら、最後まで男に思いを残す心根を描き出す。桐竹勘十郎のお三輪は、ふりかかる困難と闘い続ける強さを人形の全身を使って表している。24日まで。

(大阪樟蔭女子大教授 森西 真弓)

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