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「情」伝える実力光る(演芸評)

桂よね吉、繁昌亭大賞受賞記念ウィーク

「幸助餅」を口演する桂よね吉

芸歴25年、派手な活動はしないが華も色気も実力もある。そんな桂よね吉が第15回繁昌亭大賞を獲得、繁昌亭昼席の受賞記念ウィーク(12〜18日)ではここぞとばかりにトリで腕前を披露。十八番を日替わりで演じ、やりきる気合と濃密な演技力で釘付(くぎづ)けにした。

「幸助餅」(14日)は喜劇王・曽我廼家五郎原作の人情噺(にんじょうばなし)。関取に肩入れして身代をつぶした男の再生の物語だ。よね吉は「わしはなんでこうなんや!」と後悔の疼(うず)きに震え、やがて目がさめる男を熱演。周囲の人物にも真心がこもり、さながら一人松竹新喜劇のよう。泣き笑いを丁寧に紡ぎ、みなが笑顔になる大団円は浪花の青空の爽快さだ。

目玉は「中村仲蔵」のリレー(16日)。江戸期の名優が売り出す端緒となった逸話で巧者の露の新治が前半を担当した。歌舞伎の名題となった仲蔵が忠臣蔵で格下が演じる五段目の斧定九郎を配役される。意地で工夫を思案し浪人の姿形に「これだ」とひらめいて――。

引き継いだよね吉は仲蔵の役者人生の曲折を語り、これに賭ける誰も見たことがない定九郎像を体現する。白塗りの顔に黒の着流し、水も滴る男ぶりに殺気を湛(たた)えて決める見得(みえ)が鮮やか。往時の客が息をのんだ舞台をまざまざと目に浮かばせ、同時に力強い所作と妖しい声音で演じるよね吉が血糊(ちのり)まで美しい定九郎その人に見える。芝居の再現で魅了し、役者の心の軌跡も細やかに届けてうなる出来栄えだ。

俊才の師匠桂吉朝から芝居噺や多くを継承。さらに情の表現を磨いて強みにする。1週間、繁昌亭ロビーは届いた祝い花であふれた。アピールはどこか不器用な花形だが、上方落語のためにももっと前に出なくてはいけない。

(演芸ジャーナリスト やまだ りよこ)

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