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知られざる名曲の味わい(音楽評)

長岡京室内アンサンブル「空に飛びたくて」

サン=ジョルジュの演奏では音の粒立ちが際だった

知られざる作曲家や名曲は、いくらでもある。故に「新発見の作品」を演奏するのは簡単だ。けれどもそれが、我々の音楽史の認識をガラリと変えるような存在というのは、そうそうあるものではない。長岡京室内アンサンブルコンサートツアー「空に飛びたくて」(2月6日、長岡京記念文化会館)で演奏されたサン=ジョルジュは、モーツァルトと同時代の作曲家。パリでオーケストラを率いて活躍した。すっきりと型にはまった構成は当時の音楽状況を彷彿(ほうふつ)とさせるし、西インド諸島生まれという出自からは当時の植民地往来が垣間見える。おまけにフェンシングも一流。フランス革命直前のパリの様子が透けて見える。

1曲目は、彼の2本のヴァイオリンのための協奏交響曲。水の泡が次々とわきあがるかのような2人のソロの周りに、これまた下から上へと、ぽこぽこと泡が立つアンサンブル。清楚(せいそ)な音の粒立ちが、めくるめく連続を立体的にする。アンサンブルを評する時に「かけあい」という言葉がよく使われるが、それとは全く違って、自然に積み重なり自然に調う在り方。

続くウェーバーのクラリネット五重奏曲は弦楽合奏版。クラリネットの息の長さには、どこかへ連れていかれそうな恐ろしささえ感じた。

最後のチャイコフスキーの弦楽セレナーデは言わずと知れた名曲だ。ところが、始まった瞬間に息をのむ。普通なら上からの強い宣言のような開始であるはずなのに、ひと弓のフレーズが長く、ふわりと浮かび上がる蜃気楼(しんきろう)の様相なのである。

アンコールはボッケリーニの「マドリードの夜警」。即興をちりばめて、ユーモアを客席に残した。

(関西学院大学教授 小石 かつら)

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