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次の15年へ「四天王からの親離れ」 笑福亭仁智に聞く

文化の風

開場から15周年を迎えた上方落語の定席、天満天神繁昌亭(大阪市)が約1カ月にわたる記念公演を開催中だ。開場以来、繁昌亭を訪れた観客はのべ190万人。大阪の文化を象徴するランドマークの一つとして定着したが、足元では新型コロナウイルス禍に苦しむ。上方落語界の現状や課題を上方落語協会の笑福亭仁智会長に聞いた。

一門超え切磋琢磨

「四天王からの親離れ」――。15周年を迎えるにあたり、今後の上方落語協会のテーマとしてこんなキャッチコピーを掲げた。「繁昌亭の15年も含め上方落語は長く(桂米朝、六代目笑福亭松鶴ら)『四天王』が残してくれたものを継承してやってきた。次の15年は将来の落語家が『先輩たちのおかげで落語ができる』と思うものを残していく。それくらいの覚悟が必要」と訴える。

繁昌亭オープンの立役者でもある桂文枝の後を受け2018年、会長に就任。連日満員だったオープン後の数年から時は流れ「近年の昼席の平均動員数は(定員216席の)180になり170になり、160へという流れにあった」。コロナ禍の影響を受け足元では70人に届かない難局のかじ取りを担う。新作派として鳴らしてきただけに、新しい時代の落語は自分たちで作るという意識は人一倍強いのだろう。

15周年記念公演として昼席では「桂米朝一門ウィーク」など5週間にわたり流派別に5つの一門を週替わりで並べた。「東京は複数の協会、流派の競争がうまく作用している。上方でも切磋琢磨(せっさたくま)してレベルアップしていく必要がある。一門の中で、また一門間でも競争意識が高まる機会にしたかった」と狙いを説明する。

8月には師匠の笑福亭仁鶴が亡くなった。一番弟子の仁智は「四天王が抜群に面白くした上方落語だが、一部の人にしか知られていなかった。落語を聞いたことのない人にまで、その面白さを届けたのが(四天王の次の世代にあたる)師匠だった」と振り返る。

中堅層を底上げ

上方落語が世間の耳目を集めるには、仁鶴のようなスターの登場を待つ必要があるのだろうか。「もちろん若いスターは育てたい。(協会主催のコンテストである)上方落語若手噺家(はなしか)グランプリからもいい若手が出ているし、ネット配信で新たな魅力を発信している例もある。ただ時代も変わって(落語ファン以外の人たちが)落語に目を向けるきっかけ、その風がどこから吹いてくるかは正直わからない」と過度なスター待望論にはくぎを刺す。

「大阪で落語は漫才、新喜劇に次ぐ3番手」と謙虚な現状認識の下「風が吹いてきたときに備えて、上方落語自体のレベルを底上げし、漫才に負けてない、新喜劇より面白いと言ってもらえる環境をつくっておくことが大事」とみる。

そのために「入門から30年あたりで脂がのってきた平成入門組、50歳前後の世代を前に出していきたい。ベテランの安定感もいいが、中堅の面白さを見てもらう流れもつくりたい」。繁昌亭の昼席は現在、2時間半で8席。コロナ禍の影響などもあり公演をコンパクトにする方向で進めてきたが「ゆくゆくは10席にして、中トリにベテランを配し中堅の実力派をトリで出すことも考えている」。

当面は守りの経営が続くが、大阪から打って出る攻めの策も温める。昨年から、東京で協会主催による上方の若手がトリをとる落語会を定期的に開く予定になっていた。コロナ禍で延期となっているが、企画が実現すれば関西圏以外の落語ファンに上方落語の存在をアピールし、若手が東京の落語家と切磋琢磨する場にもなっていくだろう。「上方落語を全国へ」の思いも胸にコロナ禍の先を見据えている。

(佐藤洋輔)

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