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ピアソラ生誕100年、関西で演奏会相次ぐ

文化の風

アストル・ピアソラの生誕100周年を機に、関連する演奏会が相次いで開かれる。タンゴにジャズ、クラシック、ロックなどのエッセンスを取り入れた音楽の魅力について、演奏会に出演するバンドネオン奏者の三浦一馬と小松亮太に聞いた。(聞き手は山本紗世)

三浦一馬「時代に即したサウンドの再構築を」

三浦はかつて小松に師事した=飯島 隆撮影

――命日の7月4日に兵庫県立芸術文化センター(西宮市)で行われる演奏会に出演する。改めてピアソラの魅力をどう考えるか。

「ピアソラは人の名前であると同時に、ジャンルの名前だ。ルーツのアルゼンチンタンゴをベースに多様な音楽が創造的にブレンドされている。例えば今回演奏する『ブエノスアイレスの冬』。冬の寒くて暗いイメージの中に、生命の息吹、春の兆しを感じさせる一曲だが、クラシックのバロックを思わせる手法が使われている。そういうふうに、一曲一曲に様々なジャンルの音楽が潜んでいる」

――バンドネオンという楽器は、ピアソラの演奏でどんな役割を果たすか。

「ピアソラ自身、バンドネオンの奏者だった。ピアソラの音楽には、バンドネオンと不可分な部分がある。例えば、ピアノでは弾きにくいがバンドネオンだったら弾ける、という音型がある。バンドネオンは蛇腹を動かしつつ側面のボタンを押す楽器だが、ボタンはドレミの順番に並んでいない。発展途上で止まってしまったかのようで、楽器として未完成だと感じる。だからこそあの独特の音が生まれる」

――今後の演奏活動に、ピアソラはどのように関わってくるか。

「数年前に『東京グランド・ソロイスツ』という楽団を結成し、フレキシブルに編成を変えたり、編曲を行ったりしながらピアソラを演奏してきた。ピアソラというジャンルを引き継ぐ、とまでいうつもりはないが、時代に即したサウンドの再構築は大きな意義があると思う」

小松亮太「タンゴ見直す契機に」

小松(中)は日本におけるバンドネオンの第一人者(C)Motoki Uemura

――7月10日、住友生命いずみホール(大阪市)で行われる演奏会に出演する。生誕100周年の演奏会をどのようなものにしたいか。

「来年は没後30年なので、この2年は記念イヤーだ。ただ、お祭り騒ぎとして消費するのではなく、ピアソラへの誤解を正しタンゴを見直す年にしたいという思いがある」

――ピアソラへの誤解とは何か。

「ピアソラの音楽はチェリストのヨーヨー・マやバイオリニストのギドン・クレーメルらの演奏がきっかけで1990年代にブームになった。ブームはピアソラを聴く機会を圧倒的に増やしたが、一方でピアソラの音楽を変質させた面もある。今ピアソラを演奏している人の9割は、アルゼンチンタンゴの世界には興味がなく、ピアソラ個人の作品を愛している人だ」

「タンゴミュージシャンが演奏する前提で作曲された作品を、タンゴを知らない人が演奏している。だから、リズム感がおかしかったり、タンゴにはありがちな楽譜のミスプリントや書き間違いをそのまま演奏してしまったりといったことが起きる」

――小松さんの考えるピアソラ像とはどういうものか。

「ピアソラブームとともに、もともと踊りの伴奏にすぎなかったタンゴをピアソラが改革し芸術にしたのだという俗説も広まった。大衆の無理解と戦う天才、という構図は受け入れられやすいが、根拠に乏しい。ピアソラの音楽はタンゴの伝統の恩恵のうえに成り立っているのだという事実を改めて認識する時に来ているのではないか」

アストル・ピアソラ(1921~92年) アルゼンチン出身の作曲家、バンドネオン奏者。タンゴに異ジャンルの音楽の要素を融合させた独自の演奏形態を確立した。代表作に「リベルタンゴ」など。

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