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オペラのニューノーマル、演出切り詰め熱演(オペラ評)

びわ湖ホールプロデュースオペラ「ローエングリン」

演出と舞台美術を切り詰めて上演した(びわ湖ホール提供)

伝説となった「神々の黄昏(たそがれ)」の無観客上演から1年。ワーグナーの「ローエングリン」がセミ・ステージ形式で鳴り響き、待ちに待ったファンの渇望に迫真の熱演で応えた。(3月6、7日、大津市のびわ湖ホール)

「ローエングリン」は歴史ドラマの形式をとった悲劇的メルヘン。楽劇に至る最後のロマン派オペラだ。ワーグナーが確立した綜合(そうごう)芸術は美学的かつ歴史哲学的なプロジェクト。もとより演出と舞台美術の要素を切り詰めたセミ・ステージ形式には限界があるが、オーケストラを舞台中央に配した構成からの再発見も少なくない。皮肉にも視覚面の後退によって聴覚が活性化し、音楽面での革新性に驚きをもって集中した。

ワーグナーは各楽器の音色と音域の特性を絶妙にブレンドし、独自の響きで歌唱の図柄を透かし彫りする。沼尻竜典は登場人物の性格や場面の雰囲気、さらに対話での心の綾(あや)を重層的かつ微細に表出した。その指揮に京都市交響楽団が鋭敏に呼応し、醇乎(じゅんこ)たる音響がホールを満たした。

当初の歌手の来日ができなくなり、直前まで交代が続いたが、日本人アンサンブルの水準は両日ともに高かった。福井敬の輝かしい緊迫感と小原啓楼の叙情的神秘性が、それぞれローエングリンの両面性に肉薄した。森谷真理はエルザのアイデンティティの不確かさを体現。オルトルートの豪胆さが憑依(ひょうい)した谷口睦美との対決には息を呑(の)んだ。ハインリヒ王の妻屋秀和とテルラムントの小森輝彦が傑出。伝令役の大西宇宙の朗々たるバリトンは思わぬ発見だ。

セミ・ステージ形式がオペラ上演のニューノーマルとなるとして、私たちは綜合芸術のオラトリオへの遡源にどこまで耐えられるだろうか。

(音楽評論家 藤野一夫)

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