2020年の関西文化を振り返る - 日本経済新聞
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2020年の関西文化を振り返る

文化の風

コロナ禍で揺れに揺れたこの一年の関西文化の動向を振り返る。各分野とも入場制限や無観客などで感染防止策を徹底しつつ、オンライン配信などに活路を見いだした。コロナと向き合う作品も生まれている。これまで以上に文化のあり方や芸術の存在意義が問われている。

演劇・演芸

集団での創作が基礎となる舞台芸術は一時、公演はもちろん、稽古を行うこともままならない状況が続いた。劇場に観客が戻ったのは夏場以降だった。宝塚歌劇団は7月に大劇場公演を再開。休演をはさみつつ、徐々に従来の公演の姿を取り戻した。人形浄瑠璃文楽は10月末から国立文楽劇場(大阪市)での錦秋公演で、歌舞伎も12月には南座(京都市)での吉例顔見世興行で関西での本格公演を再開。演目の構成や演出変更などに苦心の跡がみられた。

苦しい状況下で一つの活路となったのがオンラインでの配信だ。落語家や講談師、劇団、寄席や劇場など映像とは縁が遠かった舞台人たちも自らの活動に最適な配信を模索。観客を入れつつ配信を組み合わせた公演形態も定着しつつある。

配信作品では多メディア展開が得意なヨーロッパ企画が地元京都の街中から「生配信劇」を実施。リアルタイムの演技のスリリングさなど演劇の要素を取り込んだ映像で、コロナ時代の演劇の一つの解を示した。苦しい状況の中、演劇の存在を広くアピールしようと小劇場で活躍する約20団体が集結した演劇祭「ターニングポイントフェス」も開かれた。

上方歌舞伎を再興し長くけん引役を担った坂田藤十郎が亡くなり、文楽太夫の豊竹嶋太夫も逝った。

音楽

演奏会開催の制約が大きいからこそ、かえって地力のある公演に一層の注目が集まる。その好例がびわ湖ホール(大津市)が3月に無観客で上演したオペラ「神々の黄昏(たそがれ)」の無料配信だ。SNS(交流サイト)を中心に話題を集め、延べ41万人が視聴、菊池寛賞も受賞した。

飛沫対策が困難とされる大規模編成のオーケストラや歌唱の演奏会をいち早く再開したのは兵庫県立芸術文化センター(西宮市)。9月の「特別演奏会アルプス交響曲」では120人のマンモス編成が聞き手を圧倒した。

年末恒例の第九も今年は控えめ。「サントリー1万人の第九」をはじめ、合唱団の人数を大幅に制限する動きが相次いだ。

美術

美術館・博物館も多くの展覧会を中止した。再開後も混雑を避けるため、予約制や入場制限など新たな鑑賞スタイルが求められた。見応えがあったのは5月にリニューアルした京都市京セラ美術館の「京都の美術 250年の夢」展。会期も内容も大幅に変更したが、江戸期から現代まで京都がいかに多彩な美術、工芸を生み出してきたかを見せつけた。

コロナは作家に多くのインスピレーションを与えもした。森村泰昌は個人美術館、モリムラ@ミュージアム(大阪市)でコロナがテーマの個展を開催。マスクを着けた「モナリザ」など、この人ならではの作品でコロナ下の生活様式に切り込んだ。ゴッホやフェルメールなどの名品が「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(大阪・中之島の国立国際美術館で開催中)で来日した。

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