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続くコロナ禍、茂山茂・岡田暁生両氏に聞く

文化の風

新型コロナウイルス禍で舞台や音楽公演の中止・延期が続いている。先行きが見えない現状について、オンライン配信に積極的に取り組む狂言師の茂山茂氏と、コロナ以降の文化を著作でも論じた音楽学者の岡田暁生氏に聞いた。

茂山茂「配信で接点維持」

――茂山千五郎家は古典芸能の世界の中では、いち早くオンライン配信に取り組んだ。手応えはあるか。

「公演が止まった昨年3月からYouTubeを通じて40本以上、狂言の上演や舞台裏を語るトークなどを定期的に配信してきた。オンラインでは実際の公演と同じカチッと統制されたものをやっても魅力は伝わりにくい。トークならあえて台本を作らず、自由な雰囲気の出るワチャワチャしたものを心がけている」

「最大の目的は既存のお客さんに忘れられないようにすること。公演の間隔が開いて熱が下がってしまうと、再び関心をもってもらうのは難しい。常にお客さんとの接点を維持する努力が必要だ。おおむね隔週ペースの配信で毎回2千前後の安定したアクセスがあり、狙いは達成できている」

――コロナ禍以降、リアルな公演の集客はどうか。

「特に夜の公演は戻っていない。観劇は、鑑賞後に食事をしたり一杯飲んだりもセットで楽しむもの。劇場を出て街が真っ暗では以前のように足を運んでもらえない。社会全体が元に戻らなければ、僕たちも元には戻れないということが、この1年ではっきりした。舞台芸術の世界でも様々な考え方があるが、個人的には『文化が大事』という言い方でなく『文化も大事』と訴えたい」

――国などに望むことはあるか。

「今回の緊急事態宣言で、イベントの中止ではなく無観客開催を要請された。僕らにとって観客が集まれない公演は飲食店に『客を入れずに営業しろ』というのと同じ。言葉がすれ違っていると感じる。社会に制限をかけるのなら、せめて、それぞれの現場に即した意味のある言葉を発してほしい」

(聞き手は佐藤洋輔)

岡田暁生「非常時だから試せることも」

――昨年9月にコロナ後の文化の行方を論じた「音楽の危機 《第九》が歌えなくなった日」(中公新書)を刊行した。その後8カ月間での状況の変化をどう見ているか。

「執筆の時点ではまだ公演がほとんど行われていなかった。刊行後、制約を受けながらも公演の事例が増え、予定の公演をなんとかスケジュール通りに進めようと手いっぱいになっている関係者らの苦心がかえって鮮明になったように思う」

――文化の役割について改めてどう考えるか。

「東京の寄席が緊急事態宣言期間中も営業を続けようとした際、その理由を社会の維持に必要で不要不急ではないからだと表明した。全くその通りだと思う。もちろん、寄席や公演をやったからといって感染症が退治されるわけではない。だが、こんな状況でもこんな面白いことをできるんだ、という希望は見せることができる。それが文化の仕事ではないか」

「コロナ前の元通りの世界に戻ることは当面ない。今は復旧ではなく、人同士の距離の確保や換気の必要性などを逆手にとったぶっ飛んだアイデアを試してみるチャンスの時だという発想があってもいい。平時にはできないことでも、非常時の今なら試せることも多い」

――実例はあるか。

「たとえば、作曲家の三輪眞弘さんが昨年9月に行った無観客配信は『音楽による音楽のためのお通夜』をテーマに、メディアアーティストとコラボして耳でも目でも味わえるものだった。音楽が他分野のアーティストと連携して総合芸術に立ち返る道を示した一つの成果だ。3密にならない空間づくりにも独創性の芽はあると思う」

(聞き手は山本紗世)

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