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体験ビブリオバトル、1冊5分で本を紹介

とことん調査隊

発表者が各自お気に入りの1冊を5分間で紹介し、最も読みたい「チャンプ本」を選ぶ「ビブリオバトル」。15年ほど前に京都大学で始まり、今や全国大会は数千人が参加するまでに。特に関西で盛んで、誰でも気軽に参加できる。読書好きの記者も本を手に挑戦してみた。

4月4日日曜日の午前、大阪府茨木市にある公共施設の会議室。塾講師でグラフィックデザイナーの前浜則子さんが個人で主催する「第36回茨木ビブリオバトル」が開かれた。集まったのは20~50代の男女11人でうち2人は観戦のみ。発表者9人が3人ずつ3組に分かれ対戦した。以前は20人程度の参加が多かったが、コロナ禍以降は人数を限定。「広島」をテーマに早速プレゼンが始まる。

「ご唱和ください。『カープ、カープ、カープ広島、広島カープ』」。1番手の男性がいきなり広島カープの応援歌を歌いだす。手にする書籍は重松清の小説「赤ヘル1975」。1970年代の広島を舞台に、カープの活躍を交えて中学生の青春を描く。テーマにど直球の作品だけに紹介も真っすぐ耳に入ってきた。つかみからいや応なく興味を引かれた。

今回は1組ごとに参加者の多数決でチャンプ本を決める。1組目で記者は迷わず「赤ヘル1975」に挙手。すっかり面白さに引き込まれたが、自分も発表があることを思い出し気を引き締める。3組目、全体7番目で紹介したのは、原発事故処理が進むチェルノブイリの現状をリポートする「チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド」だ。

人類の負の歴史が刻印された場所を観光する「ダークツーリズム」。これをキーワードに広島との関連性を紹介する算段だったが、発表直前に誤算が。2組目のチャンプ本を獲得したのが「ダークツーリズム入門」。内容が重複してはいけないと、アドリブを交え必死に話す。しかし事前に組み立てた内容からなかなか修正できない。無情にアラームが鳴った。

プレゼンの後には2分間ディスカッションの時間が設定される。記者も質問を受けた。「チェルノブイリでの除染の現状は?」。しまった。真っ先に提示すべき情報を観客側に伝えていなかった。終了後、前浜さんに「チャンプ本に選ばれるまで私は半年かかりました」と肩をたたかれた。

2時間強の会に参加した収穫の一つが、普段あまり手に取らないライトノベルやSF作品に興味を引かれたこと。自分の関心に沿った情報ばかりが目に入りがちなインターネットの重力圏から脱し、興味の範囲外にある作品や文化に触れる貴重な場となった。ビブリオバトルの面白さは「普段出会わない人、本と出会えること」という前浜さんの言葉に大いにうなずいた。

前浜さんは知人に誘われビブリオバトルを知り、自ら主催するようになって3年になる。茨木ビブリオバトルのような会は各地にあり、誰でも参加できるものも多い。統括組織「ビブリオバトル普及委員会」の公式ルールに従えば、個人での主催も可能だ。関西は発祥の地だけに多くの団体、個人が主催者として活躍している。主催者によっては科学系に強い、フィクション中心といった特徴を持っている場合もある。

ビブリオバトルは谷口忠大立命館大学教授が京大の研究員だった時期に考案した。「本を通して人を知ることができる。最近は社内で開催する企業も増えています」と谷口教授は言う。4月から新生活を始めた人の中には地域や組織になじむきっかけが見つからない人も多いだろう。本を知り、人を知り、自分を知る。年度の初め、身近で行われるビブリオバトルがちょっとした刺激や指針を与えてくれるかもしれない。

(佐藤洋輔)

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