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苦悩、犠牲、葛藤 母の思い奥深く活写(文楽評)

国立文楽劇場 4月文楽公演

3部「傾城阿波の鳴門」十郎兵衛住家の段

4月の大阪・国立文楽劇場は3部制による文楽公演。さまざまな母の思いを描く作品が並んだ。

1部は「花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)」で開幕。「関寺小町」は吉田簑二郎(Wキャストで現在は吉田勘彌)の小町が老残の姿の中に往時の華やぎを滲(にじ)ませて興趣がある。浄瑠璃は竹本錣太夫を芯に掛け合い。

「恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)・重の井子別れ」は豊竹咲太夫・鶴澤燕三。大名家の姫君の乳母・重の井が体面を重んじて馬方になっているわが子の三吉を謝絶する。吉田和生の重の井は建前と本音の間で葛藤する母の辛(つら)さを奥行きのある演技で示す。立ち去り難さに行きつ戻りつする吉田玉彦の三吉が哀れだ。

2部は「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」。中国と日本の義兄弟が盟約を結ぶために妻や母が命を投げ出す物語。「楼門」は豊竹呂勢太夫・鶴澤清治。生き別れていた父娘の再会が主題。呂勢太夫が伸びやかな声で錦祥女(きんしょうじょ)の喜びを絶唱する。「甘輝館」は豊竹呂太夫・鶴澤清介。妻との縁を切るため夫・甘輝に命を奪われそうになった義理の娘・錦祥女を必死に救おうとする老一官妻の懸命さが見せ場。桐竹勘壽の老巧さが光る。「紅流しより獅子が城」は豊竹藤太夫・鶴澤清友。2人の女性の犠牲の上に連盟は成立。勇躍する男たちの雄姿を藤太夫が音吐朗々と力強く語り出す。

3部は「傾城阿波の鳴門(けいせいあわのなると)」。こちらも子別れだが、結末はより悲劇的。竹本千歳太夫・豊澤富助が娘の亡骸(なきがら)を前に慟哭(どうこく)するお弓を情感たっぷりに表現した。桐竹勘十郎も母の苦渋を余すところなく描写する。

最後は人気ゲーム「刀剣乱舞」とコラボレーションした「小鍛冶」。新たな観客層開拓のためには好企画と言えるだろう。25日まで。      

(元大阪樟蔭女子大教授 森西 真弓)

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