/

敗れゆく若武者、凜々しく(ミュージカル評)

宝塚月組「桜嵐記」

楠木正行役の珠城りょう㊨と弁内侍役の美園さくら

男役として充実期を迎えたトップスターが、また一人去っていく。宝塚歌劇団月組のトップコンビ珠城りょう、美園さくらの退団公演。ミュージカル「桜嵐記」(上田久美子作・演出)は、「太平記」などで知られる武将・楠木正行(まさつら)を軸にした新作だ。誇らしく咲き、潔く散る桜の花に似た若武者の生き方を、珠城が雄々しく清廉に力演している。

南北朝時代、桜の名所・吉野を都とする南朝に仕え、偉大な父・楠木正成の遺志を継ぎ、京の北朝と戦い続ける正行。物見の途中に彼は、南朝の女官で公家の娘・弁内侍(べんのないし)の危難を救う。「吉野拾遺」に書かれた逸話を基に展開される二人の恋が清らかだ。

珠城は誠実な好青年が似合う個性を発揮し、高潔な武士を純粋に凜然(りんぜん)と描き出す。トップとなって5年。存在感が増す一方、変わらぬみずみずしさも輝きを放つ。弁内侍役の美園には、たおやかな風情と品があり、正行への思いの変化を繊細に表現する。

主人公の末弟・正儀(まさのり)には次期トップの月城かなと。戦への葛藤、亡父や兄への敬意を真っ直(す)ぐに描いて目を惹(ひ)く。

南北朝に至る経緯が分かりやすく、兵力で劣る南朝に広がる翳(かげ)りが切ない。ヤマ場は四條畷の決戦で、珠城らが迫力ある情景を描出。悲壮美と時代の流れ、戦いの虚(むな)しさが浮かび上がった。哀切で美しい物語だ。

続く「Dream Chaser」(中村暁作・演出)は、タンゴダンスやK-POPを歌い踊る場面などバラエティー豊かなショー。黒燕尾(えんび)姿の珠城と美園のデュエットダンスが優美で、珠城が月城ら男役と次々に踊る、後輩に別れを告げるようなシーンが胸を揺さぶる。爽やかで熱い集大成のステージだ。宝塚大劇場で21日まで。

(演劇評論家 坂東 亜矢子)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン