青年団、海外移住した日本人描く作品 13年ぶり再演

平田オリザが主宰する青年団が2月5~8日にアイホール(兵庫県伊丹市)で「眠れない夜なんてない」を13年ぶりに再演する。マレーシアの日本人向けリゾート施設に移住した日本人の姿を通じ「戦争の記憶」「ひきこもり」といったテーマが浮かび上がる作品だ。
時代は昭和末期。定年後に移住した高齢者、今後の移住を検討している夫婦、そこを訪ねてくる家族や友人たち、日本社会から逃避する場を求める若者。そうした人々の会話や交流、ちょっとしたすれ違いを通じて、それぞれの事情や思いが徐々に明らかになっていく。
平田は「自作の中では、戦争体験を登場人物が直接語るシーンが一番多く書かれた作品」と話す。かつて日本が占領したマレーシアで静かな余生を送る人々。その胸に色濃く残る戦争の記憶は作品の中心的な要素の一つとなっている。
初演から10年以上たったことで俳優と登場人物たちの年齢が離れ、社会情勢や国際社会における日本の位置も変化した。再演にあたっては昭和天皇が体調を崩している昭和末期という時代設定を導入した。それによって「自粛」が求められる時代という、作品と現代の「全く意図していない」(平田)新たな接点が生まれた。2020年以降、文化人や演劇人たちが直面している文化・芸術と自粛の関係にも触れる作品となっている。