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淡路人形浄瑠璃 「清川あさみ×いとうせいこう」で挑む

新作「戎舞+」 500年の歴史に新風

清川は伝統的な作品に新鮮な視覚イメージを導入した

アーティストの清川あさみが出身地・淡路島の伝統芸能、淡路人形浄瑠璃の新作に挑んでいる。脚本には古典芸能に詳しいいとうせいこうを招き、500年の歴史に新風をふき込んだ。

3月下旬、淡路人形浄瑠璃唯一の劇団・専用劇場、淡路人形座(兵庫県南あわじ市)で新作「戎舞(えびすまい)+」の上演が始まった。

ほの暗い舞台に浮かび上がる墨絵風のアニメーションに合わせて太夫(語り手)が淡路島の創成を語る。舞台が明転すると人形の戎が現れ、幸福をもたらすべく酒を飲みながら舞い踊る。船に乗ってタイを釣り上げた戎の背景には、清川作の幕。戎が運んでくる福をたたえるように、まばゆい朝日に輝く淡路の海の鮮烈なイメージで締めくくった。

人形浄瑠璃は主に3人で操る人形、太夫による語り、三味線の「三業」が織りなす人形劇。江戸時代まで淡路島はその中心地として大いににぎわった。大阪で成立した文楽が代名詞的な存在だが、ルーツも淡路にある。現在は淡路人形座が伝統を継承しており、近年の観客数低迷を背景に「再生」プロデューサーとして、刺しゅう作品で知られる清川に白羽の矢がたった。

新作にはアニメーション、照明、背景の幕など通常は使わない視覚的な仕掛けを配した。それぞれ「人形浄瑠璃のよさを壊さないよう」(清川)抑制的に使いつつ、時間とともに暗から明へと移るイメージ展開を演出する。平たんな印象になりがちな古典芸能に起伏を加えた。「古典とは異なる間合いなど、新たな表現力が必要。刺激になる」と人形遣いの吉田廣の助は話す。

人形浄瑠璃の芸自体には極力手をつけていない。特に後半は豊漁や海の安全を祈る伝統演目「戎舞」をほぼ原型のまま残している。戎が舞い踊るコミカルな姿から、文楽よりも大きめの人形を使う淡路人形浄瑠璃ならではのダイナミックな動きが伝わる。

淡路人形浄瑠璃で使われる人形と並ぶ清川あさみ =宮原夢画撮影

清川の判断に、古典芸能に精通するいとうも「舞台装置や大道具、小道具を変えるのは、芸を崩さず作品を新しくするのに効果的。僕が以前からイメージしていた人形浄瑠璃の現代化と一致した」と太鼓判を押す。「伝統を革新の要素が上回ると、いっときのイベントに堕して、後世につながらない。そのバランスに最も注意した」(清川)

ビジュアルとともに、手を加えたのが脚本だ。「戎舞」は島の文化と結びつく重要な演目だが、ストーリー性は薄い。「多くの人に見てもらうにはお芝居の要素が必要」(清川)といざなぎ・いざなみが日本列島を作った後、淡路島に降り立つ古事記にあるくだりをいとうが書き足した。

いとうはラッパー、作家として活躍する一方で、長く義太夫節の稽古を積んだ経験もある。脚本には古今の日本語の押韻やリズムへの知見を投入。七五調なども組み入れ古典らしさを保ちつつ現代語に近づけ、誰でも自然に理解できるものになっている。

淡路人形浄瑠璃についていとうは「大阪で洗練された文楽と比べ、より神事に近い。人間と異界の中間を行き来するような人形劇の原初的なマジカルさを感じてもらえたら」と話す。第1作は淡路の歴史や文化に焦点をあてたが、今秋上演される第2作以降は「定番の演目の数々で語られる悲劇や情念の世界、早変わりなどけれんを多用する独自のエンターテインメント性などにも着目」(清川)したものになる予定だ。「戎舞+」の上演は5月30日まで。(佐藤洋輔)

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