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「絵画がブランドの核つくる」 神戸でコシノヒロコ展

文化の風

ファッションデザイナーのコシノヒロコ

大阪の岸和田市出身で兵庫県芦屋市在住のファッションデザイナー、コシノヒロコの60年以上にわたる仕事を追った大規模な展覧会が、神戸市の兵庫県立美術館で始まった(6月20日まで、現在は展示を休止中)。デザインした洋服約250点と、ファッションデザインの着想の源でもある絵画約200点を展示する。デザインとアートにかける思いをコシノに聞いた。

――長年、ファッションデザインと並行して絵画制作を続けている。絵を描くことは、デザインの仕事にどう影響しているか。

「ファッションブランドには『自分らしさ』の核がないと駄目。らしさがなければ、いいブランドとは決していえないし、ついてくるファンもいない。私にとっては、絵画がブランドの核をつくる力だ。洋服作りに行き詰まると、絵に没頭する。すると絵に新たな世界が自然に表れる。それが私のデザインの力になる」

「ファッションは、自分一人ではつくれない。縫う人や売る人、着る人、お金を出して買う人がいる。だが、大人としてのわい雑なもくろみだけを考えていては、いいものはつくれない。全く白紙になって、子どものようなむくな気持ちで、キャンバスを前に絵を描く」

「『こうすれば受ける』とか『ここにこのテクニックを使えば面白い』とか、頭では考えない。ちらっと赤い絵の具が目に付くと、(今使うべき色は)赤だわ、と直感して、夢中で描いている間に何かができあがっちゃう。気持ちのままに自分の中から放出していくことがクリエイションにはすごく大事だ」

――デザインをするうえで、一番大切にしているものは何か。

「私の作品にはどれも、どこかに和の思想が入っている。私独自のものが出せた作品には必ずそのにおいがある。西洋の人ではちょっと作れない、感じられないだろう、というものだ。誰であれ、作るものには幼い頃からの暮らしや考え方が自然に表れる。私の場合は、小さい時から祖父に連れられて見た歌舞伎や文楽などが影響している」

――これまで手掛けてきた作品は、洋服で2000点、絵画で1200点以上だ。どういう基準で展示する作品を選んだのか。

「どの作品も、その時代その時代に精いっぱい、命懸けで作ってきたものだ。ただ、今回の展示では今でも通用する作品だけを選んだ。今面白い、今欲しい、と思えるかどうかが重要だ。たとえば、私が初めて海外でコレクションを出したときの洋服は、宝物みたいに大事なものだが、今回の展示には出していない。私の作品のアーカイブとしては重要だが、今見てピンとこないなら展覧会の趣旨に合わない。回顧展ではない、というつもりだ」

交響楽団に見立てたマネキンがよりすぐりの衣装を着てならぶ「ワクワクドキドキ」は展覧会のハイライトだ(7日、神戸市中央区)

兵庫県立美術館は緊急事態宣言の期間中は臨時休館する。コシノヒロコ展も臨時休館中は見ることができず、休館期間を終えてから展示を再開する見通しだ。

展示会場は14の区画に分けられ、それぞれに作品からイメージされたオノマトペが名付けられている。たとえば、展示室に向かう大階段を使った展示は「ペチャクチャ」。階段に立つ20体のマネキンが身にまとう衣装は、色も形もモチーフも様々。出自がバラバラの女性たちがペチャクチャと会話に興じているようだ。「ビュー」ではビューッと潔く線を引いた墨絵の前に、生地に水墨画のような絵が描かれた白のロングドレスが映える。

ハイライトは「ワクワクドキドキ」だ。ひときわ天井の高い一室に、指揮者と楽団員に見立てたマネキン106体がずらり。交響曲を奏でているようなマネキンたちが着ているのは、コレクション作品の数々だ。自由闊達な感性と好奇心に満ちたファッションを濃密に味わえ、見る人をワクワクドキドキさせてくれる。

(山本紗世)

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