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珍獣ウォンバットの飼育、大阪・池田で世界的実績

とことん調査隊

以前この欄で神戸市立王子動物園のジャイアントパンダを取り上げたところ、読者から「珍獣ならウォンバットにも取材を。大阪府の池田市立五月山動物園は世界的な飼育実績を誇ります」とお便りが来た。聞けば国内全6頭のうち4頭が同園に集中し、世界最高齢の個体も展示中という。池田にウォンバットとは寡聞にして知らなかった。どういった経緯や事情があるのだろう。

阪急電鉄池田駅から徒歩15分、市街を見下ろす五月山の中腹に同園は位置する。寒風吹きすさぶ昼下がり、柵の向こうでウォンバットが1頭元気に駆け回る。体長1メートル程度で毛は褐色。オーストラリアの草原や低木林で穴を掘って暮らし、草食で分類上はコアラに近い。つぶらな瞳や大きな鼻、短い四肢、丸っこい体形など確かにコアラと似ているが動きは俊敏だ。

飼育員の橋本詩音さんが獣舎を案内してくれた。小屋で寝ている1頭をのぞき込むと「その子が雄のワイン。この1月で32歳です」。人間なら100歳以上という。飼育下の最高齢は豪州の動物園で2017年に死亡した32歳。「まだまだ元気です。記録を更新してくれるのでは」。国内では他に長野市の茶臼山動物園が2頭を飼育する。

ウォンバットは自然界の個体が僅少なわけでもない。なぜ飼育が少ないのか。橋本さんに聞くと「手間がかかる習性のせいでは」。まず縄張り意識の強さ。個体同士を隔離する必要があり、同園は1頭ごとに数十平方メートルの専用スペースを確保する。穴を掘る習性も厄介だ。舎内でも掘れるよう厚く盛り土し、衛生上の理由から土を定期的に入れ替える。地味めの外見も一因か。パンダはもちろんカンガルーやコアラと比べてもインパクトが弱い。餌やりなどで人間と触れ合うのも比較的難しいという。

逆に言えば、同園は目の付け所が鋭いと言える。実は同園は敷地面積約4500平方メートルと日本動物園水族館協会加盟の動物園として2番目の小ささ(最小は福井県の鯖江市西山動物園)。園内は5分もあれば一周できる。規模で劣る以上、ニッチ分野に経営資源を集中するのは有効な戦略だ。園長の瀬島幸三さんは「園のシンボルとしてウォンバットを前面に押し出しています」と言う。

09年、ウォンバットの様子をライブ映像で流す「ウォンバットてれび」を開設。17年、利用者がカメラ5台のレンズの向きやズームをサイト上で操作できるよう改良した。画期的なシステムだ。ぬいぐるみなどグッズの売れ行きも好調。他にアルパカやミニブタ、羊、ヤギ、ウコッケイなどを飼育するが、この顔ぶれで昨年度まで50万人の入園者を維持。入園無料という事情はあるが、王子動物園や大阪市天王寺動物園でも百数十万人程度だから大健闘と言えよう。現在も入園者同士で距離を取るよう呼びかけ、団体利用は予約制にするなどして営業を続けている。

五月山動物園がウォンバットの飼育を始めたのは1990年、池田市が姉妹都市の豪ローンセストン市から提携25周年を記念し、ワイン以下3頭を寄贈されたのが始まりだ。92年に豪州外の動物園で初の繁殖にも成功。池田市もまたウォンバットを前面に押し出す。同市のイメージキャラクター「ふくまるくん」はウォンバットがモチーフだ。

茶臼山動物園にも問い合わせた。同園は98年の長野五輪の開催前、2000年の五輪開催都市の豪シドニーから視察団を受け入れた縁で寄贈を受けた。飼育員の高田孝慈さんが言う。「地味でもひた向きで愛らしい。人気も知名度も今ひとつですが、私はウォンバットが好きです」。日豪友好の証しとして異国の地に生きる彼らは丸っこい体に多くの人たちの愛情と期待を背負っている。

(田村広済)

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