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常時エンジン全開、圧力に圧倒(音楽評)

大フィル「チャイコフスキー・チクルスⅢ」

指揮は尾高忠明が務めた(写真提供は大阪フィルハーモニー交響楽団)

大阪フィルハーモニー交響楽団のチャイコフスキー・チクルスⅢを聴いた。今回が最終回で、交響曲第3番と第6番である(11月29日、大阪市・フェスティバルホール)。とにもかくにも、本来なら演奏会のメインとして演奏される大曲が2曲である。常時エンジン全開で、思わずオーケストラの方々の体力を心配してしまうほどの熱演だった。

演奏会の最中は、その熱量に圧倒され続けたのだが、落ち着いて振り返ると、1回の演奏会をこの2曲で構成するという時間的圧力とでも言うべき実態だけでなく、この2曲を並べることで、チャイコフスキーの交響曲を客観的に俯瞰(ふかん)する意味がしみじみと感じられ、会場で得たのとは違った余韻にひたっているところである。プログラムノートには両曲とも組曲の性格が強いと指摘されていたが、ニ長調とロ短調という並行関係故の統一性に支えられ、序奏、舞曲、フーガ、行進曲といったことがらがモザイクのように浮かび、ひとつの壮大な世界としてよみがえる。チクルスの意義が理解できたかもしれない。

今回、会場の音がとても澄んでいたことも、演奏会の世界観をつくりあげることに寄与していた。「澄んだ音」は最近の他の演奏会でも感じることなのだが、演奏会の無かった期間に何かがあったのか、一時期奏者が間をあけて演奏したからか、客席が息をこらしているせいか、空調のせいか、それとも気のせいかわからない。けれども、とりわけ今回のチャイコフスキーは、たしかに音の響きの奥行きが深く、底の見えない怖さへとつながる気配がした。ひたむきな演奏と澄みわたる音。まさに今聴くことができる最高の演奏だった。

(関西学院大学教授 小石 かつら)

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