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合奏の喜び、無垢の祈りに(音楽評)

シリンクス・フルートアンサンブル定期演奏会

フルート族のみで構成されたアンサンブルは珍しい

年末恒例となったシリンクス・フルートアンサンブルの定期演奏会。この時代に音楽することの意味を再認識させる静かな情熱に胸が震えた(昨年12月25日、大阪市の住友生命いずみホール)。

持田洋を中心に1992年に結成された「フルート族」だけからなるユニークなアンサンブルで、関西を拠点に活躍。ピッコロからコントラバスまで音域と表現の可能性は広いが、合奏用の原曲は少ない。管弦楽曲からのアレンジを多く手掛け、楽器の限界に挑戦し続けてきた。

欧州各国の個性的な作品を選(え)りすぐったプログラム。ロッシーニの「セビリア」序曲で始まり、R.シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲル」で終わる。トゥルーのフルート三重奏曲では、ソナタ形式の端正なたたずまいの中で女神たちが軽妙に戯れ、曲想がしなやかに展開する。ドビュッシーの「4つの古代の墓碑銘」に刻印された五音音階による東洋風の郷愁はフルートの独壇場。エルガーの「セレナード」ではラルゲットの叙情がアンサンブルに協和した。

バッハ「マタイ受難曲」のアリア「愛ゆえに救い主は死に給う」での、持田のソロが白眉だった。魂の音色が哀(かな)しみと慰めの歌を安定した技巧で切々と語る。合奏の喜びの求道が無垢(むく)の祈りとなった。「狩のカンタータ」の「羊は安らかに草をはみ」のチャーミングな牧歌では、前曲の涙が田園の陽光で輝いた。

「音楽は誰が誰の為に奏するのだろうか。今宵(こよい)演奏される作品が皆さんにどう届くか、正直私には想像できません」と持田は述べた。しかし、シリンクスの音楽は光となって聴衆の心に確かに届いたのである。

(音楽評論家 藤野一夫)

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