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ブザンソン覇者・沖澤のどか 関西で初指揮

文化の風

ブザンソンのファイナルで指揮する沖澤のどか(C)Yves Petit

2019年にフランスのブザンソン国際指揮者コンクールで優勝した沖澤のどか(34)が10月、京都市交響楽団定期演奏会に出演する。関西で一般の観客を前に指揮するのはこれが初めて。今後世界での活躍が期待される若い才能に触れる、貴重な演奏会になりそうだ。

自由に楽しく

「自分一人の音楽性ではできないことに到達できるのが指揮の醍醐味。音楽をしているときが一番自由で、楽しい」と語る沖澤。身長160センチ足らずと小柄な体格は、欧米のオーケストラの前に立つとひときわきゃしゃに見える。その小さな背中が振るタクトは、しなやかで力強く、時には跳びはねて見えるほど楽しげだ。

沖澤は青森県の出身。幼い頃からピアノやチェロに親しみ、東京芸術大学指揮科に入学。留学を経て18年には東京国際音楽コンクールで1位を獲得、翌年のブザンソンで優勝を飾った。ブザンソンは、小澤征爾や佐渡裕などの飛躍のきっかけとなったことで知られる。沖澤は現在ベルリンに在住し、昨年から名門ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で首席指揮者のアシスタントを務める。

関西では、この10月の京響定演がブザンソン後の本格的な指揮デビューとなる。19年の大阪での青少年向け無料コンサート以来、関西では出演が途絶えていた。6月の大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏会も入国制限の影響で出演不可となった経緯がある。

今回の京響の定演で取り上げる曲目のメインは、ラヴェル「ダフニスとクロエ」組曲第1番、第2番。沖澤は「ダフニスとクロエは2~3世紀の古代ギリシャの物語が題材のバレエ音楽。肌のふれあいを思わせる生々しさは、現代の都市生活の感覚からは遠いところにある」として、「来場者を別世界に導くような演奏会にしたい」と語った。

京響にとっても、沖澤の起用はチャレンジだ。新型コロナウイルス下の入国制限で外国人指揮者の枠が空いたのを逆手にとり、今年度は沖澤を含む30代の若手指揮者3人を定期演奏会に抜てきした。「京響は今後、次世代の音楽家に積極的にチャンスを与える」(常任指揮者兼芸術顧問の広上淳一)というメッセージだ。

楽団員に伝える力

京響の定期演奏会はリハーサルの日取りがその他の演奏会より1~2日長い。指揮者はその分、何を表現したいのか、それをどういう言葉で楽団員に伝えるのかが問われる。まずは小規模な演奏会で様子を見るのが通例で、いきなりの定演抜てきは京響としては異例だ。「若い指揮者にとっては非常にしんどい場になる」(京響の上野喜浩演奏事業部シニアプロデューサー)

一方で「沖澤にはその能力が十分あるのでは」(同)という期待も語る。沖澤は芸大時代からオペラの企画演出などを通じて、周囲の人を巻き込んで作品を作る経験を積んできた。もの柔らかな言葉遣いで場を和ませつつ、自分の意思をしっかり伝える話術は、そうして磨き上げてきたものだ。

経験は指揮にも生きている。「休憩中などを狙って奏者とコミュニケーションをとると、感じ方の違いが分かって面白い。リハの見え方も変わってくる」。だからこそ、「自分の軸をもって活動するためにも、オーケストラと回数を重ねて関係を築くことを大切にしたい」と考えている。

コロナ禍は、若手にとっては代役のチャンスが巡ってくる好機でもある。世界が注目する若い力が京響とどんな音を生み出すか、今から楽しみだ。

(山本紗世)

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