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痛快な弱者の抵抗、切ない余韻残す(演劇評)

兵庫県立ピッコロ劇団「スカパンの悪だくみ」

喜劇の中に権力への風刺を巧みに織り込んだ

長引くコロナ禍。発散したい気持ちも辛抱する日々。そんな時、弱者の大活躍する舞台が心のカンフル剤になることもある。兵庫県立ピッコロ劇団が、モリエール原作の喜劇を関西弁で演じるシリーズの第2弾『スカパンの悪だくみ』を上演(5月29日、兵庫県尼崎市のピッコロシアターで所見、上原裕美台本、孫高宏演出)。

ナポリの裕福な商人の息子のオクターヴ(堀江勇気)とレアンドル(今仲ひろし)は、父親達(たち)(森好文・風太郎)が船旅で留守の間に貧しい娘と恋をする。だが、強権的な父達は猛反対。侍従のスカパン(三坂賢二郎)は、若者達のために悪知恵を働かせる。

父親達は侍従のスカパンやシルヴェストル(岡田力)に、常に折檻(せっかん)を加えていた。スカパン達は、日頃(ひごろ)のうさばらしも兼ね、作り話で彼らを怖がらせ、口八丁手八丁でしっぺ返しをしつつ、若者達の恋の成就を手助けする。弱者が権力者を手玉に取る様(さま)が痛快。俳優達は身体を駆使、奔放な演技で笑わせる。三坂賢二郎は、関西弁を軽快に語りつつ、時折差別される者の無念を滲(にじ)ませた。

大きく傾斜した舞台。奥に行くほど高く、父親達は、当初は高い位置に立ち、威厳を保つが、次第に翻弄され、下段で情けない姿になっていく。 

若者達の恋人が、両家の父親達の生き別れた実子とわかり、互いの結婚が許される。ハッピーエンドだが、最後に現実の切なさを表す演出が施された。スカパン同様身分の低かったレアンドルの恋人が、出自が判明した途端、最上段に上がり、家族と祝宴に向かう。空腹のまま取り残されるスカパン達。弱者の試練は、簡単には終わらない。ただ、スカパンの力強い眼光から生き続ける意志が伝わり、観(み)る者へのエールとなった。

(大阪芸大短期大学部教授 九鬼 葉子)

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