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京舞×狂言、初コラボ 新作「たぬき」

文化の風

初の合作に挑んでいる井上安寿子(手前)と茂山忠三郎

京都で育まれた伝統芸能、京舞と狂言を合わせた新作「たぬき」が18日、京都芸術劇場・春秋座で上演される。優美な身体表現である京舞とセリフを使った喜劇である狂言、両者による共作は今回が初めてという。京舞井上流の井上安寿子、能楽大蔵流狂言方の茂山忠三郎が2つの芸の魅力を融合させた表現を探る。

互いの型崩さず

7月上旬、京都芸術大学(京都市)の一室。女が男にお酌するシーンの稽古に安寿子と忠三郎が取り組んでいた。「杯を掲げるように上げるのが狂言の動き。京舞では(お酌を)どうする?」「上下には動かさないで傾けるだけ」――。女は閉じた扇をとっくりに見立て、男は広げた扇の杯で受ける。「ここは狂言に合わせた方が、舞台で見栄えするかな」など、意見を交わしながら動きを決めていく。

自身の出演シーンの所作や舞を両者が持ち寄り、組み合わせながら制作が進む。その過程で、双方の芸の細かな違いが次々にあらわになる。「まず、お稽古を始める際のお辞儀の仕方から違うことに驚いた」と安寿子。繊細な動きで美を追求する京舞。大きくシンプルな動きとセリフを用いて笑いを重視する狂言。狂言「狸腹鼓(たぬきのはらつづみ)」と地唄「たぬき」を基に脚本を書き下ろした忠三郎はそうした違いを意識しつつ「互いの型を崩さないこと。京舞の華やかさ、美しさと狂言の喜劇性を両立することを突き詰めた」。

演出に楽しさを

新作「たぬき」は狂言の形式で進行し、途中京舞が織り込まれる。物語は京都の東山、猟師が獲物を探しているところから始まる。猟師の前に尼に化けたタヌキが現れ、正体を見破った猟師は射殺そうとする。命乞いをされた猟師は狐(きつね)よりもうまく化けられるなら助けてやろうと提案し、タヌキはそれに応じて美しい女に化けるのだが……。

狂言「狸腹鼓」と同様、忠三郎は狸の着ぐるみや面などをつけて登場。命乞いをしたタヌキが美しい女に化けるくだりで、入れ替わって安寿子が現れる。女の姿になったタヌキ(安寿子)が猟師を誘惑しようと京舞を披露するという趣向だ。舞台機構も駆使し2人が入れ替わったり、同時に舞台に現れたり。化かされた猟師が見ている美女とその正体である毛むくじゃらのタヌキが二重写しのように重なる演出が楽しい。

今回の企画は京都芸術大学の田口章子教授が企画している異種芸能の比較上演の一環。主にお座敷で舞う舞踊として発展した京舞の他ジャンルとのコラボレーションは珍しく「日本舞踊の他の流派とも経験したことがない」(安寿子)。田口教授が同大卒業生の2人に「伝統芸能に親しみのない人にも興味を持ってもらえる作品を」と投げかけ、実現した。「2つの芸の魅力を伝えながら、現代の感覚で教訓なども感じてもらえるものに仕上がった」(忠三郎)と手応え十分。

「所作の間の息づかい、間合いの違いを1つの作品に同居させるのが難しい」(忠三郎)と苦労も多かったようだが「能楽以外の人と動きや演出を検討しあうことで、確実に(芸の)引き出しが増えた」(同)と収穫も実感している。

「簡素化された狂言の動きと優美な京舞といった違い」が浮かび上がる一方「舞台上、互いの芸がシンクロする驚きがあるはず」と忠三郎。狂言は能とともに発展し、京舞も能の動きを取り入れて現在の姿になった。能を介して通底する両者の芸が重なる瞬間もまた、異ジャンル合作ならではの見どころだ。

(佐藤洋輔)

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