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ギターのエフェクター 音色七変化、プロを支える工房

匠と巧

一つ一つすべて手作業で製作するエレキギターのエフェクター

エレキギターの音色をひずませたり迫力を与えたりするエフェクターで、プロギタリストが信頼する職人が大阪にいる。設計から部品の組み付け、配線まですべて一人で手掛ける。ギタリストの感性に寄り添い、音に落とし込んで20年あまり。手作りだからこそ生み出せる音色が、ミュージシャンを支えている。

大阪メトロ堺筋線の堺筋本町駅近く、雑居ビルに囲まれた場所に、浜田一平さん(43)が立ち上げたエフェクトロニクスエンジニアリング(大阪市)の工房がある。趣味でエフェクターを自作する人はいるが、多くのプロに納める品を手作りするのは珍しい。

「はんだ付けひとつで、音が変わる」と浜田さん。ロックやジャズ、ブルースなどジャンルの違いだけでなく、ギタリストの個性によってその時に届けたい音色は変わる。「弾き手を想像してつくりあげる」手法を取るため、たった一人での手作業を徹底する。

浜田さんは机でなく膝に載せた作業台で組み立てる。横には数十種の電子部品が入った道具箱。基板の小さな穴に手に取った電子部品を差し込み、ニッパーで不必要な部分を切る。数十の部品を組み付けた後、はんだで接合し、配線を経て手のひらサイズの箱に収める。ブランドロゴまで自分で貼り付け、「全部やらないと気がすまない性格なんです」と苦笑いする。

「製品だけど、作品」と語る浜田さんは自らのエフェクターについて語る。ロック歌手でギタリストのROLLY(ローリー)さんや、現在はソロ活動のためバンド「ウルフルズ」の活動を休止しているウルフルケイスケさん、沖縄出身の「BEGIN」など幅広いプロが愛用する。

エフェクターの心臓部となる基板に電子部品を丁寧に組んでいく=大岡敦撮影

ものづくりに夢中になったきっかけは、ラジカセの修理だった。高校で組んだバンドで仲間のエフェクターが壊れた際、開けて修理すると元通りになった。外から見ると音色が変わる不思議な箱だが、中にあるのは電子工作で見知った回路。「自分でもつくれる」。大阪・日本橋の電子部品店に入り浸り、自作を重ねていった。

「沖縄の風を感じられる音がほしい」など、プロからは時に感覚的な注文も寄せられる。音の波形、電子回路に落とし込み、基板も自分で設計する。難しい注文に応えられるのは大学時代からプロと向き合ってきたからだ。

片っ端からプロギタリストに連絡を取った。大学生に返事をする人は少なかったが、やりとりをしてエフェクターを送った。それでも、使ってもらえるのはリハーサルまで。本番は違う機器を使われた。

悔しさからプロの感性を探り何度も挑戦した。大学を卒業するころには、一部のプロから信頼を得る。ローリーさんはあるときこう言ったという。「一平のエフェクターがないと、パンツをはかないでステージに上がるようなものだ」

エフェクターの先に無数の観客がいる。浜田さんは「間接的に日本中の人の感動を手伝っているのがうれしい。自分の天職」と話し、より良い「作品」づくりにまい進する。

(岩戸寿)

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