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ミラーボール職人、乱れ輝く 均等の美

匠と巧

1段ごとに大きさを変え、隙間を埋めるように丸く切り取った鏡を貼っていく=大岡敦撮影

赤や緑の光を反射し、空間を華やかに照らすミラーボール。まばゆい輝きは職人の手作業が生み出している。出来ばえを左右するのは、台座に無数の小さな鏡を貼り付ける「鏡貼り」だ。阪急うめだ本店(大阪市)などに採用されている品は、大西鉄工所(大阪府守口市)の2人の職人が鏡を細かく切り取っては手早くくっつけていた。

住宅街の一角にある6畳ほどの作業場。様々な大きさの半球形のアルミや、縦1メートルほどの大きな鏡の板が所狭しと並ぶ。中央のテーブルに並んで腰掛ける大西則夫さんと満智子さんの夫婦は、30年以上ミラーボールを作ってきた。日本で数少ないミラーボール製造会社の日照(大阪府摂津市)から発注を受け、半球状の型に小さな鏡を貼る仕上げの作業を手掛ける。

ミラーボール作りは則夫さんが鏡を小さく切り出すところから始まる。ミラーボールに貼り付ける鏡には、円形の丸鏡と台形の角鏡の2種類がある。見た目が美しい丸鏡が日本では人気だという。

ただ、鏡を切り取るのが難しいのも丸鏡だ。厚さ2ミリの鏡の3分の1ほどまで道具で傷を入れた後、金具でたたいて直径1~4センチほどの小さな鏡を抜き出す。「力が弱ければ鏡を抜き取れないし、強過ぎると鏡が割れてしまう」と則夫さん。機械には置き換えられない緻密な作業だ。

円形に鏡を切り出すと、アルミでできた半球の台座に満智子さんが鏡を貼っていく。見た目や光の輝きを左右する最も重要な工程だ。平らな部分から1段ずつ接着し、鏡と鏡の間隔が均等になるように意識しながら並べる。

「2段目以降は間隔を埋めるように鏡を置いていくので、1段目の間隔がばらばらだと次の段で鏡が入りきらなくなる」と満智子さんは神経を集中させる。半球の台座の平らな部分を組み合わせて球状のミラーボールにするため、最も重要な1段目は、地球に例えれば赤道に相当する位置になる。

日照の円鏡ミラーボールは明るい場所でもきれいに見えるよう、中心から1段離れるごとに鏡の直径を1ミリずつ小さくしている。必要な鏡は千枚以上に上る。直径30センチの半球を貼り終えるのにかかったのは40分ほど。満智子さんは「きれいに貼れたミラーボールは鏡が斜めにまっすぐ並んでいるように見える」と笑う。最後に則夫さんが白セメントを鏡の上から全体に塗り、球を布で磨けば完成だ。

日照は1949年の創業で、前身の会社からミラーボールを製造している。創業者で会長の山中肇さんが海外に出かけることが多く、日本に持ち込んだのが始まりだ。バブル期には飲食店やディスコを中心に年に4000個の注文があったこともあり、会社の屋台骨に育った。

今では年400個ほどの生産に減ったが、社長の山中稔喜さんは「舞台用を中心に注文がある」と話す。最近は葬儀場に納入するなど新たな販路開拓に工夫を凝らしている。大西夫妻の後継者は現時点ではいないというが、新たな職人を育てていきたいと考えている。(泉洸希)

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