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海洋堂のフィギュア 生態追究、キャラクター躍動

匠と巧

質感などを表現しながら塗装していく=大岡敦撮影

海洋堂(大阪府門真市)は国内のフィギュア制作メーカーのパイオニアで最大手だ。アニメや漫画のキャラクターだけでなく、専門家にも劣らない知識を持った職人たちが精巧な生物も作り上げる。古田悟郎さん(49)が得意とするのが爬虫(はちゅう)類や、現在は生存していない古生物。現実と幻想のはざまで、生物の習性や骨格、性格にまで思いを巡らせながらフィギュアに魂を込める。

カメ、カエル、トカゲ、恐竜、怪獣……。古田さんの作業場の棚には、手掛けたフィギュアがずらりと並ぶ。体の模様やツヤまで入念に作り込み、自然なポーズでたたずむフィギュアはどれも生きているかのよう。「どの作品も自分の子供みたいなもの」と、一つ一つに思い入れがある。

フィギュアの原型は、針金などで骨格を再現するところから始まる。想像に任せるのではなく、実際の標本や発見された化石を基にした専門家の予測などを参考に組み上げ、「学術的な正しさ」を欠かさない。

次に、紙粘土を使い骨格に少しずつ肉付けをする。中生代に生息していた空を飛ぶ爬虫類、翼竜では「鳥のように胸の筋肉が発達していたはず」。現存する動物も参考にしながら、現在は目にできない生物の体を作り上げていく。

棚いっぱいに詰まった図鑑や専門書からは、爬虫類や古生物への探求心が垣間見える。「インターネットで簡単に調べられる時代だが、やはり専門家が本気で作っている本は参考になる」。常に新しい書籍を探し、知見をフィギュア作りに取り入れている。

ただ、学術的な正しさばかり意識してもリアリティーは追求できない。時には想像で補う必要がある。意識するのは自然の物理法則を守ること。「実在しない生物を人間の目に信じさせるためにも、フィギュアが脚で自立するのはとても大事だ」と話す。

色塗りも重要な工程だ。「ただの塗り絵じゃなく、質感を出す作業だ」。体のツヤはリアリティーを出すために大事な要素の一つで、例えばカメの甲羅は泳いでいる間にツヤがなくなるため、フィギュアではツヤを抑えるという。

大きいところはスプレーで大胆に、細かい部分は筆で丁寧に色を入れる。一つのフィギュアに1カ月以上かかるのは当たり前で、1年かけた作品もある。

古田さんならではのこだわりは、生物の行動や習性なども想像して「キャラクターを載せる」ことだ。カメがコミカルに泳ぐ様子や、怪獣の凶暴さをイメージしながら、ポーズや顔、質感でキャラを表現する。まさにフィギュアに魂を込める作業だ。

「自分が心から欲しいと思い、ワクワクするフィギュアを作る。そうでなければ他人にも欲しいと思ってもらえない」。古田さんは自分の「好き」を大切にフィギュア制作に励む。特に愛してやまないのはカメ。「世界で約300種類いるとされるカメを、死ぬまでに作りきりたい」と夢を描く。(張耀宇)

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