/

通信網の地下迷宮、0.1ミリひび探る NTTのトンネル点検

匠と巧

通信ケーブルを敷くトンネル「とう道」で専用の道具を使い壁の状態を調べる宮地さん=笹津敏暉撮影

大阪市中心部にあるNTT西日本のビルには、地下トンネルへと続く扉がある。通信ケーブルが走るトンネルの総延長は大阪市内だけで約100キロメートル。地上とは対照的に、音や光のない空間が際限なく続く。NTTインフラネット(東京・中央)の宮地誠一さん(58)らはトンネルの保守点検を担うかかりつけ医だ。

トンネルは直径3~5㍍で、通路の脇を通信ケーブルが走る。ケーブルが切れたり燃えたりすれば大規模な通信障害につながりかねないため、地下深くにもぐらせ地震などの災害から守っている。

NTTではこうしたトンネルを「とう道」と呼ぶ。防犯のため入り口や位置は非公表で、社員の大半も新人研修でしか入れない秘密の空間だ。

鉄筋コンクリート製の構造物は寿命が50年とされるが、劣化を早く見つけ補修すれば長持ちさせられる。目視で0.1ミリ単位のひび割れを見つけ、金属製の棒を当て先端の金具が転がる音の違いを聞き取る。コンクリートに空洞があると高めの音がするという。

ひび割れを見つけると幅を測り、チョークで壁に印をつけてシステムに登録。5年に1回の定期点検でひび割れが大きくなっていないか調べる。ゆっくり歩きながら目を凝らし、2人で1日かけて30メートルを点検するのがやっとだ。劣化を見つけると補修方法も考える。

NTT西の管内にはとう道の作業者が約10人いる。宮地さんは愛知県など東海4県を若手と2人で担い、九州のとう道にも入る。

地下トンネル「とう道」へ続く扉

「地下にこんな場所があるのか」。電柱建設などを経て1988年にとう道に初めて足を踏み入れたとき、宮地さんは息をのんだ。

一人前になったと感じたのは97年ごろ。新しいとう道を設計したときだ。構造計算や図面の作製、発注まで任され、保守が専門だっただけに悩み抜く。CAD(コンピューターによる設計)ソフトを独学で習得し、なんとか完成させた。

無人の広大な空間で作業する点は宇宙飛行士の船外活動のようでもある。けがをしたときなどに助け合えるよう、必ず複数人でとう道に入る。「仕事のミスは仲間がカバーしてくれる。迷惑をかけないよう安全に気をつけている」。設備にぶつかったりつまずいたりしないよう、動くときはなるべく両手を空ける。

上司の梅田弘幸さんは宮地さんを「仕事をコツコツとこなし実直だ」と語る。宮地さんは若手社員に「分からないことは聞くことも大事だが、まずは調べよう」と助言する。自発的に学んだことの方が忘れづらいと考えるからだ。

とう道は「洞道」と書くが、NTTは水を連想させる漢字表記を避けている。かつてケーブルは銅製が主流で水分や湿気に弱かったためだ。今でも水分はコンクリート内部の鉄筋がさびる原因となる。

とう道にはセンサーがついており、火や水、有害ガスを検知すると宮地さんらがすぐ駆けつける。NTT西のとう道は通信障害の原因となったことがなく、95年の阪神大震災でもほぼ無傷だった。地道な努力が今日も通信の大動脈を支えている。(梅国典)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン