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かに道楽の「かに切り名人」、鮮度・うまみ 逃さぬ手際

匠と巧

薄い赤身を残しながら脚の殻だけを包丁でそぎ落とす=目良友樹撮影

カニ料理専門店を経営するかに道楽(大阪市)は毎年、カニを素早くきれいにさばく「かに切り名人」を1人だけ選ぶ。殻を外して現れる薄い赤身は、美しさとともにうまさをしっかり蓄えている。現役の名人はわずかに4人。客に感動を届けようと、職人はかに切りの技を磨く。

1994年から毎年9月に開く「かに切りコンテスト」。アルバイトを含め300人ほどが参加し、各店舗の予選を勝ち上がった職人が腕を競う大会だ。参加者は脚が5本付いたズワイガニの半身を10肩選び、1脚ずつ殻の上部をそいで長さを整える。1つの脚から、鍋やお造りで食べるカニの身を2つ作り出す。

審査のポイントは、包丁でさばいた角度がそろっているか、殻が残っておらず箸がスッと通るか、爪が割れていないかなど。仕上がりの美しさとさばく速さを評価し、優勝者に名人の称号を与える。

何度も優勝したり退職したりする人がいるため、現場にいる名人は4人に限られる。京都伏見店(京都市)の調理主任、玉置修也さんはその一人だ。初優勝した2019年の大会では、4分4秒でカニ10肩をさばいた。玉置さんは「技術は、鮮度や盛り付けの美しさや食べやすさといったお客さんの感動につながる」と考える。

高校卒業後の1993年に入社して以来、厨房に立ち続ける。多いときには1日150杯をさばき、厨房の指揮や後輩の指導も担う。「若手の頃は小器用だがどんくさく、毎日のように手を切っていた」と玉置さん。「お客さんに『かに道楽のカニはおいしい』と言ってもらいたい」との思いで技を磨いてきた。

厨房に立つと目つきは変わる。びっしり詰まった段ボールから冷凍のカニの半身を取りだし、姿や重さを目利きする。「身が詰まっているかは触った感触でだいたい分かる」。うまく解凍できないと素材の味を引き出せないため、水温管理や解凍時間を計る経験と技術も欠かせない。

多い日には1日150杯のカニをさばく=目良友樹撮影

殻と白身の間の薄い赤い身には、うまみや甘みが詰まる。赤い身が取れないようにさばくのは至難の業だ。包丁を1回だけ入れて殻の一部を剝がす手法が主流だったが、玉置さんは細かく3面をそぐ「3面切り」を得意とする。刃を入れる回数が増えるため時間はかかるが、プリッとした身を立体的に見せられる。

大会では当初はさばく速さを評価していたが身の食べやすさも重視するようになり、19年大会で3面切りが基準に加わった。玉置さんは「手間はかかるが、食べる人を思って突き詰めてきた技が評価されたので優勝できた」と振り返る。

厨房の後輩には「何百人分の料理を作るうちに作業のようになってしまうが、常に調理を楽しむことを心がけてほしい」と指導する。チェーン店ながら、カニの切り方や食べ方で客から個別の要望があればできるだけ応える。「作っている側が楽しむことがおいしい料理の秘訣」と玉置さんは笑う。(丸山景子)

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