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冨士屋製菓の豆菓子 カリッと食感、一粒ずつ職人見極め

匠と巧

豆の表面に均一な厚さになるように寒梅粉をまぶしていく=大岡敦撮影

外出や外食を控える日々が続き、自宅でのんびりとお茶やお酒を楽しむ機会が増えた。そんな時間のお供として長年愛されてきたのが、カリッと軽い食感の豆菓子だ。大阪が発祥といわれ、冨士屋製菓本舗(大阪府富田林市)は元祖といえる「雀(すずめ)の玉子」を1953年の創業当初から変わらない製法で作り続けている。

3月下旬に工場を訪ねると、入り口に植えたアーモンドの花が見ごろを迎えていた。ここで豆菓子を作るのは、社長の北野登己郎さんをはじめとする3人の職人。工程は豆の表面に粉をまぶす、火を入れる、味をつけるの3つに分けられる。

まず、1分間に約30回転する大きな釜で、豆の表面に粉を均一にまぶす。一度に扱う豆の量はおよそ40キログラム。砂糖水を少しずつ垂らして湿らせ、小麦粉と寒梅粉(餅米のでんぷん)を混ぜた粉を金属のへらで豆にまとわせていく。北野さんは「一粒一粒を見るのではなく、全体を大きく見る。手触りもヒントになる」と話す。

粉は3ミリほどの厚さで均一にまぶすのがポイントだ。火を入れると膨らんでカリッとした食感になるが、厚さが違うと火の通りやできあがりの大きさにばらつきが出てしまう。比較的丸いピーナツに比べ、形が複雑なカシューナッツなどは難易度が上がる。

次に25~30分かけて火を入れる。約1分おきに数粒取り出しては割って、火の入り具合を確かめる。焼き上がりが近づくと、口に入れて食感を確認。焼きすぎると焦げたにおいがしたり、豆の苦みが出たりする。焼く時間は気温や湿度にあわせて細かな調整が必要で、「取り出すのに最適なタイミングは30秒から1分しかない」(北野さん)。冬の乾燥した日が一番カリッとした仕上がりになるという。

焙煎(ばいせん)後に味つけをする

最後に濃い口しょうゆと刻みのりをまぶして乾かす。出来たてはほんのり温かく、甘辛い生地とピーナツの味わいに手が止まらなくなった。職人がすべての技術を身につけるには2~3年ほど経験を積む必要がある。

雀の玉子のほかに、季節限定のいちご味や色鮮やかなかぼちゃ味などもそろえる。シナモン味や黒こしょう味は妻の雅江さんのアイデア。製法は変えずに今のニーズにあった味を提供したいと、手作りで多品種少量生産を続ける。

50年ほど前には大阪で約20社が豆菓子を作っていたが、後継者不足や国内市場の縮小が進み3~4社に減ってしまった。冨士屋製菓も1995年ごろの最盛期に比べ、売上高は3分の1に減少。自社の電子商取引(EC)サイトなどを活用し、客層の拡大に励む。

これからの目標は10年以内に販売店を出すこと。洋菓子店のようにオープンキッチンで製造工程を見せつつ、飲食スペースで味わってもらう。北野さんは「わざわざ遠くからも行きたいと思ってもらえるような店をつくりたい」と夢を語る。

(斎藤さやか)

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