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関西の味噌消費なぜ少ない 天下の台所、保存食頼らず

とことん調査隊

関西人はあまり味噌汁を飲まないらしい。取材先の食品スーパーでそんな話を耳にした。確かに総務省の家計調査では、味噌の1世帯あたりの年間購入量は、神戸市が主要都市で最も少なく、その後に大阪市が続く。消費量が少ないのはなぜだろう。関西の食文化を調べながら味噌の歴史をひもといた。

まずは実態を調べるために大阪市内のスーパーへ。こうじの原料の違う米味噌や麦味噌、熟成期間の違いで色が変わる白味噌や赤味噌など約50種類の商品が並ぶ。品ぞろえは首都圏のスーパーと大きな差はないようだ。来店客に話を聞くと、「味噌を使うと味が濃くなるため、あまり料理にも使わない」(80代主婦)という声があった。

スーパーの担当バイヤーにも話を聞いてみた。ライフコーポレーションでは1店舗あたりの味噌の売上金額は首都圏に比べ関西は6%少ない。関西はだし文化が根付いている。「薄味を好む人が多いからではないか」という。大阪・北浜の和食店、今橋よし田はランチでは味噌汁と吸い物などを日替わりで提供する。「吸い物の日は汁物をおかわりする人が多いかな」

家計調査では、1世帯あたりの年間購入量(2018~20年平均)は神戸市が3256グラムで主要52都市で最も少ない。大阪市は3757グラム、京都市は4003グラムと、最も多い秋田市の半分以下だ。

地域で大きな差があるのはなぜだろう。「気候の違いによる食文化の違いでは」。みそ健康づくり委員会(東京・中央)の鈴木亮輔委員長が教えてくれた。冬に雪が降って収穫できる食材が減る信州や東北では、味噌を使う保存食が発展した歴史がある。戦国時代には武田信玄や伊達政宗も農民に味噌作りを奨励していた。一方、大阪や神戸の冬は温暖なうえ、大阪は天下の台所として全国から食材が集まった。保存食に頼る必要がなかったのではという。

「関西ではパンを好む人が多い」。鈴木委員長が続ける。家計調査(18~20年平均)では、パンの購入量上位5都市のうち4都市を大阪市や神戸市など関西が占める。港町の神戸で西洋から商人が移住し、パン屋が増えた。パンなど洋食が広がれば味噌を使う機会も減る。

関西では味噌の製造所も少ない。全国味噌工業協同組合連合会(東京・中央)の加盟企業は関西2府4県に55社。最も多い長野県は100社と関西全体の2倍近い。関西では甘い白味噌、関東では塩気の強い赤味噌など地域によって種類も違う。消費量に影響しているのだろうか。ヒントを探すべく味噌の製造所にも話を聞いた。

100年以上の歴史がある六甲味噌製造所(兵庫県芦屋市)を訪ねた。長谷川照起取締役は「味噌の使い方も関係している」と話す。

平安時代まで味噌はぜいたく品だった。貴族が食べ物にかけたり、おかずとしてなめたりしていた。長らく都のあった関西では、この名残で食材に味噌を塗る田楽など、そのまま使う風習が根付き、塩気の少なく甘い白味噌が好まれた。ライフでも「関西では売り上げの1割が白味噌で、関東(2%)と差がある」という。

一方、関東では鎌倉時代以降、庶民や武士が味噌汁として飲むようになった。味の濃い赤味噌が主流になったという。汁物に入れる方が味噌を使う量が多く、消費量に影響がありそうだ。

取材を通じて、味噌は古くから日本の食卓で愛されてきたことを実感した。最近はコレステロールや血圧を下げる効果もあるとして注目を集め、輸出も増えている。新型コロナウイルス禍で家にいる時間が増え、たまに料理をするようになった記者。今夜は久しぶりに自宅で味噌汁を作ってみよう。(泉洸希)

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