変わらぬ大阪の明るさ、音楽で元気を 山本彩さん
関西のミカタ シンガー・ソングライター

■シンガー・ソングライターの山本彩さん(27)は大阪・なんばを拠点にするアイドルグループ「NMB48」のメンバーとして活躍し、現在はソロの歌手として活動している。関西特有のノリの良さや会話のテンポがグループの特色を出すのに役立ったという。
先生になって歴史を教えたいという夢もあったが、NMB48のオープニングメンバーのオーディションが開催されると知り、母の勧めもあって受けようと決めた。好きな音楽を仕事にする最後のチャンスだと思いダメ元で応募した。
4人きょうだいのにぎやかな家庭で育ち、自然に身についた関西の「ボケとツッコミ」の文化が、思いがけず芸能界で武器になった。テレビ番組の司会でのトークやバラエティー番組でのお笑いの要素を評価してもらえた。東京での仕事も増える中で、いい意味での「アイドルらしくなさ」がグループの個性になってくれた。
自分を含め関西の人は早口な人が多いと思う。コミュニケーションを取りたいという意識が強くてしゃべる量が多くなるのだろう。知らない人同士で会話することも珍しくない。関東で仕事をしていて「一緒にいるとおもしろい」と言われるとうれしく、大阪で生まれ育ってよかったと思う。
■2018年にNMB48を卒業。ソロのアーティストとして拠点も東京に移した。だが、地元・大阪でのイベントが仕事を頑張るモチベーションになっている。
自分にとって東京はまだ仕事をするという感覚になる場所。一方で大阪は駅に降り立った瞬間に実家に帰ってきたような気分になる落ち着ける場所だ。グループとしてなんばを拠点に8年間活動し、その頃から応援してくれる地元の人もいる。帰る場所があるから離れた場所でも頑張ろうと思える。

子供の頃は阪神タイガースが好きな父に連れられ甲子園球場に通った。春と夏は高校野球も見に行く。甲子園で活躍した球児がプロ野球でプレーするのを見るのも楽しみ。高校の授業の一環で宝塚歌劇を鑑賞して感動を覚えた。阪急電車に揺られ月に2回くらい見に行くほど好きになった。
ちょっと帰らないと知らない街に感じるほど、大阪の変化のスピードは速い。実家の周辺もどんどん変わり、さみしさはあるけれど、経済に活気があるのはいいことだと思う。それでも小学校低学年の頃、放課後に通ったダンススクールに向かう電車の車内の雰囲気や通っていた学校など変わらないものがあるとほっとする。大阪で2025年国際博覧会(大阪・関西万博)が開かれるのもとてもうれしい。その活動にお仕事でも携われるよう私も頑張らなくちゃと思う。
■新型コロナウイルス感染拡大の影響でイベントの延期などが相次いだ。困難の中、大阪が持つ明るさが支えになると信じてコロナ収束を待っている。
私自身ライブができなくて悔しい思いをしているが、ファンの方々も残念な思いをしていると思う。SNS(交流サイト)などを使ったファンとの交流の時間が増えたのはいいことだけれど、小さくてもいいので再びお客さんが入った会場でイベントをしたい。そのときは今まで以上に時間をかけてしっかり公演を見てもらいたい。
街は変化を続けていくが、大阪の活気はこれからも変わらないと思う。コロナが収まってまた集まれるようになれば、持ち前の明るさで大阪が元に戻るのにそんなに時間はかからないはず。私も大阪出身の一人として、老若男女全ての方々を元気づけられるように音楽活動に取り組んでいきたい。(聞き手は高崎雄太郎)