未来の自動運転車、ゲームで体験(古今東西万博考)
1970年・大阪

1970年の大阪万博には、当時は夢の技術だった自動運転を体験できる施設もあった。住友電気工業が手掛けた「交通ゲーム」だ。コンピューターが十数台の車両の位置や動きを把握して衝突を防ぐよう全体を制御するなか、参加者は右折や直進など限られた操作で2分以内にゴールを目指した。万博中に25万人が訪れる人気だった。
60年代は高度経済成長による自家用車ブームで交通事故が急増し、「事故が起きない交通システム」への関心が高まっていた。事故や渋滞を防ぐため交通量に応じてコンピューターが信号機を制御する中央制御型の交通管制への期待もあった。住友電工は68年に交通管制事業に参入し、警視庁や福岡県警にシステムを提供。大阪万博は同社の技術をアピールする機会でもあった。
同社のシステムは現在も信号を制御する交差点数で国内トップという。交通データの処理技術に強みがあり、2015年には三菱商事とカンボジアの首都プノンペンの交通管制を受注した。人工知能(AI)やスマートフォンを使った渋滞の予測など、次世代技術の開発にも取り組んでいる。
大阪万博から半世紀。自動運転と交通管制を組み合わせて事故を防ぐのは、もはや夢の技術ではなくなってきた。住友電工は11月末から茨城県日立市で自動運転バスの実証実験に参加している。交差点にセンサーを設置し、バスからは見えにくい歩行者などを検知。事故のリスクが高ければ、バスに情報を送り、車両の速度を落としたり、停止させたりする。(佐藤遼太郎)