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若手演劇人の舞台 関西に 才能育む土壌必要 謝珠栄さん

関西のミカタ 演出家

しゃ・たまえ 大阪府吹田市生まれ。1971年、宝塚歌劇団に入団。75年に退団し米国に留学。帰国後は舞台やテレビで振付家として活躍。85年に主宰劇団(現TSミュージカルファンデーション)を設立し、オリジナル作品の発信も続ける。

■宝塚歌劇団出身の演出家、謝珠栄さんは2020年8月、パソナグループが兵庫県淡路島に創設した劇場「波乗亭(なみのりてい)」のこけら落とし公演で、演出や振り付けを担当した。

こけら落とし公演の「淡路の月に誓う」は島に伝わる「松王丸伝説」をミュージカル化した。平安末期、大輪田泊(現在の神戸港の一部)の波よけ島を作るために大岩を運ぶ若者たちを描いた物語で、地元の歴史や文化に触れた小中学生にも喜んでもらえた。

パソナの事業には、淡路島で舞台芸術の人材を育成し、地域の雇用を生み出す夢がある。公演には西日本出身の多くの若手が参加した。上演作のテーマは関西の歴史や風土で、次回は神戸のジャズバンド発祥の物語を描く予定だ。

関西の若い演劇人はここで歌やダンスの技術を磨き、照明や音楽など裏方の仕事も行う。舞台芸術を盛り上げるには、役者だけでなく裏方のスタッフを育てる必要がある。パソナの取り組みが一つのモデルになると期待している。

■宝塚歌劇団では男役で活躍。退団後に米ニューヨークに留学し、帰国後は東京を拠点に振付家、演出家として多くの舞台を手がけた。主宰劇団での独自作上演、古巣宝塚の作品の脚本・演出など、関西でも活動を広げている。

長年東京で活動してきて、舞台芸術の様々な機会が東京に集中していることの弊害を痛感する。地方で歌や踊りを学んでも、事情で上京できずに埋もれる人たちがいる。米国では舞台付きのレストランなどショー文化が各地に根付く。日本でも舞台芸術の裾野を広げなければいけない。

東京では「劇団四季」などの常設劇場を拠点に、舞台芸術の人材を育成する土壌がある一方、稽古場の1カ月のレンタル費用が200万円に上るなどコストも莫大だ。ならば観客動員を見込める京阪神に拠点となる劇場をつくるのが良い。ただ、課題はいろいろある。若い才能を育てるには、熟練者の指導だけでなく、国などの支援も不可欠だ。

舞台芸術は人間の心に栄養を与えてくれる。私もミュージカルの演出家として関西での振興に一役買いたい。関西人は能動的で面白いことが好き。本来は演劇がすごくはまる気質。時間もお金もかかるが、万人が面白いと思える関西発の作品をつくりたい。

私の劇団ではオリジナル作品にこだわり、アジアや日本的要素を取り入れてきた。自分の国や地域の物語なら、その心を理解して発信できる。演劇の裾野を広げるために、日本そして地方を知る我々ならではの表現をしたい。

10日開幕の劇団四季の舞台「The Bridge~歌の架け橋~」でも振り付けを指導した

■16年に梅花女子大(大阪府茨木市)の歌劇団芸術監督に就任。多摩美術大(東京・世田谷)の客員教授も務め、人材の育成に情熱を注ぐ。

役者には技術だけでなく舞台に向かう心構えも大事だと教えている。昨年6月ごろの淡路島での稽古でも「必死に良いものをつくらないとだめ」と叱った。公演は何度もあるが、観客には一度きり。毎回最高の仕上がりを見せなければならない。宝塚歌劇団は各地で公演を行うが、兵庫県宝塚市の大劇場は、ファンが全国から来る特別な場所。そういう関西に足を運んでこそ見られる演劇を、宝塚以外にも根付かせるのが夢だ。

大阪府・市が誘致を進める統合型リゾート(IR)にも、常設劇場ができれば若手の活躍の場が増えると期待している。舞台の基盤がなければ、音楽家や脚本家など舞台に携わる才能も育たない。

新型コロナウイルスの感染拡大は舞台関係者に多大な影響を与えたが、各人が自身の足元を見つめ直すきっかけになった面もある。各地に若者たちの挑戦の場をつくり、演劇文化が地域に根付くことで、関西の舞台芸術振興への希望が生まれると信じている。(聞き手は中川竹美)

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