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大阪府・市 「副首都本部」が司令塔に 「府主導」懸念も

(更新)
副首都推進本部会議で発言する本部長の吉村大阪府知事(右端)と副本部長の松井大阪市長(中央)=28日、大阪市中央区

大阪府と大阪市は28日、都市計画や産業振興など府・市にまたがる広域行政の意思決定を一元化する条例案の骨子を公表した。11月の住民投票で否決された大阪都構想の代案で、府・市でつくる副首都推進本部を〝司令塔〟にして「二重行政」を防ぐ全国でも異例の制度だ。知事が最終決定権をもつ仕組みで、反対派からは「市の自治権が侵害される」などの懸念も出ている。(佐野敦子、奥山美希)

条例案の骨子は28日の副首都推進本部会議で示された。松井一郎市長(大阪維新の会前代表)と吉村洋文知事(維新代表)はそれぞれ2月議会に条例案を提出する考えを改めて示した。

2015年12月に設置された副首都推進本部は、府・市の内規である「要綱」に基づく組織。2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の誘致や大阪府立大・大阪市立大の統合などについて協議し、府・市の方向性を一致させてきた。一方、広域行政の基本方針である「成長戦略」は同本部で協議するものの、最終的には府と市それぞれが決定してきた。

骨子によると、同本部を条例に明記して格上げしたうえ、産業振興やまちづくり、都市基盤整備などの方向性を示す成長戦略は同本部で一元的に決める。個別の政策については、地方自治法252条に基づき市から府に事務委託するか、共同部署を設置するかなどを府・市両議会で決める。松井氏はこの日の会議で、特に都市計画の事務について、府への委託や共同部署の設置を早期に進める姿勢を示した。

教育や福祉など住民に身近な業務は一元化の対象外とする。消防や水道は別の枠組みで府・市一元化を進める。

骨子では、知事が副首都推進本部の本部長、市長が副本部長を務め、知事が「議事の決定権」をもつとした。府・市幹部は「意見が割れた場合、知事が最終的に広域行政の基本方針を決めることができる」と説明する。

ある自民党市議は「府が全て決められる。市の自治権の侵害だ」と反発する。一方、吉村氏は28日、記者団に「市長は予算(編成権などの)権限を持っており、市長が反対したら決められない」と説明した。総務省は「条例の制定権は地方自治体にあり、国は関与しない」(行政課)との立場だ。

吉村氏は11月上旬、都構想と同様に市の427事務と約2000億円の財源を府に移管する考えを示していたが、今回は方針決定の一元化にとどめ個別事業の移管には踏み込まなかった。権限移管には国との調整が必要で、都構想をともに推進した公明党にも慎重論がある。今回は都構想の代案を早期に実現するのを優先したとみられる。

富野暉一郎・龍谷大名誉教授(地方自治論)は「全国的にも珍しい取り組みだろう」と話す。「道府県と政令指定都市は対立しやすい。府が責任をもって広域行政を進める仕組みを条例で定めれば、議会で条例を廃止しない限り協力して進めなくてはならない。日本の地方自治にとって一つの実験になるのではないか」と話す。

一方、長野県立大の三浦正士助教(地方自治論)は「まちづくりを府・市連携で進めるという考えは重要だが、市民から比較的遠い存在の府が最終決定権をもてば、市民目線の政策が実施されにくくなるのではないか」と慎重な見方を示す。

政令市と道府県、各地で調整が課題に

政令市と道府県が対立したり、業務が重複したりする「二重行政」の解消は各地の課題だ。地方自治法は利害調整の場として「指定都市都道府県調整会議」を規定しているが、開催頻度などは自治体に任せており、1度も開かれていない地域もある。

調整会議は2016年の改正地方自治法に基づいて、全国の20政令市と道府県の協議の場として規定された。地方自治法によると、開催を求められた市や道府県は協議に応じなければならない。調整会議でまとまらない場合は総務相が知事や市長に勧告できるが、知事や市長が従う義務はない。

総務省によると、19年7月末までに10の地域で実際に開かれ、災害対策や芸術振興などについて話し合った。大阪府・市は調整会議を「副首都推進本部会議」として10回超開いた。

一方、一度も開催されていない地域もある。静岡県の川勝平太知事はリニア中央新幹線工事用トンネルの土砂置き場の問題などを巡り調整会議の開催を静岡市に呼びかけるが、市側は消極的だ。背景には、政令市である静岡市を廃止し、権限の強い特別区を置く「静岡型県都構想」を唱える川勝知事に対する静岡市側の反発がある。

同じく調整会議を開いていない千葉県の担当者は「千葉市と随時協議しており、わざわざ調整会議を開く必要はない」。福岡市の担当者は「市長と知事の意見交換ができているため、調整会議をすれば逆に手間がかかる」と話している。

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